いすゞ自動車へ外資参入?-『不毛地帯(三)』
衝撃の多い三巻でした。
特に壹岐さんの妻の死、そして元上官の娘・秋津千里との恋。
【この巻で出てくる会社】
・双日
・フォード
・第一銀行(2000年に他行と合併してみずほになる)
企業ではありませんが、
・通産省
実際の出来事がベースになってると思うと、ワクワク感がすごい。
○著者
1巻で書いたので割愛。
○内容
いすゞ自動車とフォードの提携の準備が進む。
日本の自動車産業が発展し、アメリカの市場を買い始めた頃、外資が日本へ入ってこようとしていました。その一つが、フォードによる日本進出の計画。しかしそれを食い止めたい通産省と、構わず進める自動車メーカーや商社の対立と情報戦がまた面白い。
フォードは日本企業と提携したい、出資比率50%を取りたがるものの、そんなことはどの会社も許せるはずがなく、さらに通産省としても許可が下りないはず、であれば新たに合弁会社を作ればよいのではないかと話が広がります。
3巻では結論が出ず、次巻に続きます。
ここでまた登場する谷川元大佐。毎回言葉が重い。
商社で汚く染まってしまいながらも、抑留者の会へ定期的に顔を出す壹岐(モデル:伊藤忠元社長・瀬島龍三)は、いつも谷川元大佐の言葉に胸を痛めているようにみえます。
今のように物資は豊かでも、精神的な不毛の中に生きる方が、生き辛い・・・
さらに事件は起こります。
壹岐をライバル視する副社長・里井のアメリカ出張中、心臓発作が起こしてしまい、現地社長に出世していた壹岐に助けられてしまいます。里井は壹岐に貸しを作り、弱みを握られたと屈辱を覚えます。さらに大門社長も、そのような状態の里井をどう扱うか、次期社長のポストを含め考えを見直し始めます。
壹岐のプライベートも事件が多い3巻でした。特に女性絡み。
○感想
衝撃的なことが多かったな。
日本の自動車市場への、外資の進出。こういうとこに商社はバチバチ絡んでるのね、知らなかった。
主人公の壹岐がその計画をどう進めていくのか、日米メーカー両者に加えて銀行や通産省、そして社内の敵ともバランスをとりながら進めていく流れが、なんだか今やっている仕事に重なりました。
「絵を描く」っていうやつ、ストーリーの組み方や見せ方が、商社だとより大切なんだろうなあと思ったり。
健気で奥ゆかしい、軍人の妻の鑑といえるような壹岐夫人の死も衝撃でした。
十一年も夫がシベリアに抑留され、生きているかもわからなかったり、帰ってきてからも商社で忙しくしていて、その仕事の多くは語ってくれず不安になったりと苦しいことが多かったはず。それでも子供たちを育て上げ、献身的に家族に尽くし、晴れやかな舞台でも慎み深い彼女は素敵だったし、だからこそ亡くなってしまった時泣いてしまった。
そして彼女の死から数年後、元上官の娘との恋。壹岐さんの紳士的なアプローチが素敵。自制心が強い元軍人の商社マンに、情熱を込めて抱きしめられたらもうイチコロやな…と思ってしまった。
○やること
6/23までにあと2冊読まなきゃいけない。無理よ…。
読んだ期間メモ
(一)6/5~6/8 めちゃ頑張って読んだ…
(二)6/9〜6/14 案の定たるんだ
(三)6/15〜6/20 早く読まんと間に合わんと焦る
おしまい。
商社の情報戦、政治とカネ-『不毛地帯(二)』
一巻に続いて勢いで読みました。
と言っても、今回も内容が濃くて、なかなか時間がかかりました。今回は商社編!
主に登場した企業はこちら。
この本はフィクションとされていますが、実在の会社の、実際のできごとをベースにして描かれています。
【出てくる会社】
・三菱商事
・三井物産
・丸紅商事
・東日貿易
企業ではありませんが、
・防衛庁
・政界
・警視庁
三巻以降出てくる企業も多そうです。
◯著者
第一巻の方で書いたので割愛。
◯内容
商社に入り本格的に働き始めた壹岐正。この巻では、戦後日本の自衛隊用戦闘機の機種決定を巡る商戦で活躍します。
ちなみに、作品が描かれた同時期、似たような事件が起こっています。(関係がないフィクションとしているらしい。)
戦争から帰り、不慣れながらも商社に入り、そこでただ妻子を食べさせられるだけ働こうと考えていたはずの壹岐でしたが、商社でも彼の持つ参謀としての力が発揮されてしまいます。
自衛隊が持つ戦闘機をどのメーカーにするか、受注争いに巻き込まれ、国防のため良い戦闘機を採用させたいという思いと、政界各所へ根回しすることの罪悪感に揺れます。
性能・価格ともに良いラッキード社の戦闘機があるにもかかわらず、グラント社のまだ試験機しかない戦闘機を手配しようという流れがあり、しかもその裏には防衛庁内の勢力争いがあったり、他社(双日)の政界への働きかけがあったりと黒い動きがあったのです。1 千億円の商戦に勝った壹岐でしたが、その代償は大きく、かつて陸大時代の同期であった川又は憤り自殺しました。
大蔵省への、憤りの言葉。
大山の苦労を知らずして、あなた方は自分の保身、出世のみを考え・・・人を動かし、権力をふるい、政治家と結びついて利権支配のみに汲々としている、・・・
ビジネスっぽく役立ちそうなことも。
かつて参謀本部にあった壹岐が、戦線を前進させるか撤退させるか軍の作戦を立案するときに叩き込まれた思考法で、どんなに複雑でも問題点を5つ以内に要約しその裏付を取れば結論は出るというもの。なるほど。
イスラエルとシリアの、第三次中東戦争をずばり予想し事前に社内を動かしていたり、活躍がすごい。
お話の中で、デヴィ夫人のイメージの紅子さんという、綺麗な女性が出てきます。インドネシアで影響力を拡大している華僑の第二夫人ですが、彼女と各商社との関わりも多い巻でした。彼女も壹岐の情報網の一つです。
商社で思わず昇進し、活躍するなかでも壹岐は葛藤しています。
そんなところに、谷川元大佐というかつてシベリアでともに苦しんだ彼が、こんな言葉をかけます。
「壹岐くん、今度は少しは、お国のためにお役になったのか」
そして繊維会社として始まった会社を、総合商社にしようとする流れのなかで、異例の昇進を果たした壹岐は周囲との軋轢を生みます。
◯感想
『鉄の骨』でもあったけど、民間企業が政治家に献金していたり、そのお金を洗浄する流れがあったり、情報の速さが命なところとか、リアルな企業小説だから想像すると楽しい。
これは過去の話だけど、今でももちろんあるはずで、、、良いことではないんだけれど、こういうことができるひと・できる会社が強くなるのは当然だなと思っちゃいました。
◯やること
3〜5巻スピード早めていきます!
もうすでに3巻半分読んでしまってます、ブログの方が遅くなってます!
読んだ期間メモ
(一)6/5~6/8 めちゃ頑張って読んだ…
(二)6/9〜6/14 案の定たるんだ
おしまい。
ソ連の非道さと帝国陸軍のプライド−本『不毛地帯(一)』
勤め先の人たちとオンライン飲み会中、おすすめの本はなに?という話になり、山崎豊子の本いつか読もうと思ってるんですよね・・・と誰かが言いました。(酔っていて覚えていない)
また、小説『不毛地帯』の登場人物に、私の勤め先の人をモデルとした人がおり、これを機にみんなで読んでみましょうかとなりました。ちなみに主人公壹岐正が入社する近畿商事は、伊藤忠商事をモデルとしています。
600ページ×5冊を、18日間で読むことになり、実際めちゃ厳しい。別に趣味だし、その期限を守らなくてもいいのですが、逆にこの制限がないと読み切れない気がするので挑戦です。
◯著者
1924(大正13)年、大阪市生れ。京都女子大国文科卒。毎日新聞社学芸部に勤務。当時、学芸部副部長であった井上靖のもとで記者としての訓練を受ける。勤務のかたわら小説を書き始め、‘57(昭和32)年『暖簾』を刊行。翌年、『花のれん』により直木賞を受賞。新聞社を退社して作家生活に入る。’63ねんより連載をはじめた『白い巨塔』は鋭い社会性で話題を呼んだ。『不毛地帯』『二つの祖国』『大地の子』の戦争3部作の後、大作『沈まぬ太陽』を発表。‘91(平成3)ねん、菊池寛賞受賞。(文庫本カバーより引用)
◯内容
壹岐正(いき ただし)を主人公として、物語は進みます。
彼は元大本営陸軍部中佐として満州で戦い、終戦と同時にソ連により抑留され、11年間シベリアで俘虜として生き、その後に日本に帰還しています。帰還から2年後、近畿商事に採用されます。軍人としてしか生きたことのない彼は、なぜ自分が商社から求められたのかわからず困惑しますが、家族の生活のため仕事を始めます。
一巻では回想シーンが多く、ソ連によるとてつもなく理不尽な扱いが描かれています。
まず極東裁判で、ソ連側の証人として立たされること。日本国の不利にならないよう、軍の上官たちに不利にならないようにと発言に配慮はするものの、その壇上に立つことそのものが屈辱でした。日本での裁判に挑む前に、ソ連で問い詰められ、ソ連側に有利になるような(極東裁判ではアメリカ対ソ連の構図となる)証言をするよう誘導されていましたが、その屈辱は同じく証人として裁判に出る予定あった上司が自死するほどでした。数年会えていなかった家族に会うことも叶わず、裁判に出席した後またソ連へ連れ戻されます。
彼は強引に罪を着せられ、収容所に連れて行かれます。そのなかでソ連の思想に染まらなかったことにより、収容所で他の俘虜から暴力を振るわれ、さらに劣悪な収容所へと転々として行きます。最終的に極北の流刑地ラゾの鉱山に行き、心身ともに消耗しながら生き延び、ついには日本へ帰還します。
軍人としてしか生きてこなかった壹岐には、商社の仕事は全くわからず、困惑しながら仕事を始めます。(実際は国費をかけ育成された参謀としての作戦力と組織力を買われていたのでした。)ソ連にいた11年間の日本の変化、新憲法の制定や自衛隊の配備といったことを、縮小版の新聞を読んで知っていきます。
企業には玉砕が許されぬ
◯感想
満州のこともソ連のことも、俘虜がどんな扱いを受けたかも、何にも知らないんだなと改めて痛感。結局これも歴史への理解がないからで、年表とか出来事の表面だけを見るのではなく、こういった小説や映画といったストーリーを通して理解することを増やしていきたいです。
先日の『ゴヤは見た』で感じたことと一緒ですね。
また、たまたま仕事であるメーカーのことを調べていて、HPの社史を見ると「当社は南満洲鉄道の子会社として設立し・・・」とあり、こんな短期間でリンクすることある??と大興奮。なんでも知っていると楽しいですね。
◯やること
5巻まで一気読み、集中します・・・!
映像を見てイメージを具体的にしたいので、映画『杉原千畝 スギハラチウネ』も並行して観る。
※読んだ期間メモ
(一)6/5~6/8 めちゃ頑張って読んだ…
おしまい。
スペインとフランス革命を知る-映画『宮廷画家ゴヤは見た(Goya's Ghosts)』
芸術に疎いので勉強。
※ゴヤって誰?
フランシスコ・デ・ゴヤ。スペイン最大の画家と言われています。18世紀末、宮廷画家としてカルロス4世に仕えました。大聖堂の天井装飾をしたり、風刺画を書いたり。
『カルロス4世の家族』
左上奥がゴヤ。
◯監督
ミロシュ・フォアマン(1932−2018)
『カッコーの巣の上で』『アマデウス』の2作品でアカデミー賞を受賞しています。プロテスタントの義父母に育てられたけれど、実の両親はユダヤ人で、ともにナチスの収容所で死亡しているという複雑な生い立ちを持ちます。
◯内容
18世紀末、スペイン最高の画家ゴヤ。
その風刺画は聖職者を批判するものもあり、教会から非難されていました。かつてゴヤは教会の天井画を書いていましたが、天使の絵のモデルが売春婦ということも発覚、そのことも批判されています。
その彼から見た当時のスペインを描いています。ゴヤ自身も登場します。
当時カトリック教会の支配力は強く、異端者を殺すべきという「異端審問」が行われていました。その対象は過激で、科学者も異端者と思えと言います。(神を否定するものはすべて対象者としてたのだと思います。)
物語はロレンソ神父という下衆な男と、若く美しい商人の娘・イネス(ナタリーポートマンの演技がすごい!)を中心に進み、ゴヤから見た当時のスペインの様子が描かれています。
ある時豚肉を食べなかったことからユダヤ教徒だと誤解されたイネスは、異端審判に呼ばれます。(この異端審判の拷問シーンが見ていられないほどキツい。)そして投獄され、家族に会えなくなり弱ったところに、ロレンソ神父が訪れます。同情し共に祈ろうと寄り添い、イネスの気持ちを惹きつけます。頼るところないイネスは、神父に好意を抱いてしまい、獄中で神父と関係を持ち娘を授かります。
しかしこの投獄自体、ロレンソ神父の仕組んだことでした。若く美しいイネスに近づくために、教会の力を利用し彼女を裁判にかけたのです。
イネスの家族は、ロレンソ神父を怪しみ国王に直訴します。結果ロレンソはスペインを追われフランスに逃げることとなりました。
その後に隣国フランスにて、革命が起こります。それはスペインにも影響していきます。
当時スペイン国王はフランス人、女王はイタリア人ということもあり、市民が反逆を起こすのです。
市民はフランス革命の思想、自由・平等・友愛を伝えるために戦うのですが、その思想を貫くために、否定するものは断罪する、神父まで投獄するという過激な戦争が起こります。
このフランス革命の影響を受け、カトリック教会は権力を失います。異端者審問にかけられ、投獄されていたイネスも解放されました。そしてイネスはロレンソ神父と、彼との娘を探します。しかし結局イネスは娘に出会うことはできませんでした。
スペインの混乱は続き、再びカトリック教会が権力を持ち直した頃、ロレンソ神父は反逆の罪により、王の前で公開処刑されます。
この一連の出来事を、ゴヤの目を通して描いた作品です。
実際ゴヤは宮廷画家として、覇権がどんどんと変わるスペインの様子を見て来ていますし、人々が思想のために戦う様子を描いています。
『マドリード、1808年5月3日』
◯感想
拷問が辛くて、見ていられませんでした。なんか昔魔女展行ったなーと思い出したり。拷問道具もえぐいんよなあ。。。
ただ、調べていくとこの異端審問は魔女を対象外としていたそうで(精神病として扱っていた)、それはなぜかとまた興味が湧いてきて、Wikipediaサーフィンしてしまいました。おもしろい。
***
なお、魔女狩りは異端審問の形式を一部借用しているが、その性格(異端はキリスト教徒でありながら、誤っているとされた信仰を持っている者であるのに対し、魔女・魔術師(魔法使い)はそもそもキリストを信じないとされる人々であるため全く別種)や実施された地域・時代が異なっているため、異端審問とは別種のものと考えるのが適切である。(引用元:
***
宗教!とか、ある国の歴史!とか、大き過ぎる枠組みで勉強しようとしていたけれど、こういう細かく深く見て行く方が面白そうなのに気づきました。
昔行った魔女展。↓
(2016年!もうそんな昔なのか…)
映画を見たけど、より細かく知りたいと思って本でもフォロー中。彼の版画に「私は見た」と詩書がみられるそうで、これがタイトルになってるんだな〜とまた面白く感じたり。
○やること
フランス革命が周囲の国や人々の暮らしにどんな影響を与えたのか、いま並行して読んでいる世界史の本で、体系的に整理します。
おしまい。
本『鉄の骨』−正しさとは何か?談合は必要か?
ZOOM朝活でお勧めされた本、その1。
(在宅勤務が続いているけれど、朝ダラダラしちゃってたところ、知人に誘われ先週からZOOM朝活に参加しています。オンラインだと気楽で良いですね。)
私の勤め先も、過去談合で刑事告発されており興味がありました。
それから気になったのは、働き始めて4年目、違う会社に勤める友達と考え方がずれていくことが描かれてるという紹介をされたので、ちょうどいいなあと思い。就活の時すでに感じてたけれど、働きだすとなおさらですね。
○著者
池井戸 潤
岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。
「果つる底なき」(講談社文庫)で江戸川乱歩賞、「鉄の骨」(講談社文庫)で吉川英治文学新人賞、「下町ロケット」(小学館文庫)で直木賞を受賞。
他の作品に、『半沢直樹』シリーズ①「オレたちバブル入行組」、②「オレたち花のバブル組」、③「ロスジェネの逆襲」(すべて文春文庫)、④「銀翼のイカロス」(ダイヤモンド社)、『花咲舞が黙ってない』原作本「不祥事」、「空飛ぶタイヤ」(それぞれ講談社文庫/実業之日本社文庫)、「ルーズヴェルト・ゲーム」(講談社文庫)、「民王」(文春文庫)、「下町ロケット2 ガウディ計画」(小学館)、「七つの会議」(集英社文庫)、「なるへそ」(Kindle Singles)などがある。
7月8日発売予定の「陸王」(集英社)が最新刊となる。
(Amazon.co.jpより引用)
○内容
中堅ゼネコンで働く、4年目社員の富島平太。
3年間現場監督として働いていたが、突然談合課と呼ばれる部署への異動が命じられる。なぜ自分がそこで働くことになったのか、そしてなぜ会社が談合を続けているのかわからないまま働き始める。
銀行勤めの同級生、野村萌とは学生時代からの付き合いである。社会人になってから恋人になり4年、遠慮もなく安心感のある関係になっていた。
しかしそれぞれ仕事を経験していくうちに、考え方にズレが生まれていた。平太が談合に関わっていることを知ると、萌は“銀行的な”批判をする。平太自身も間違っているのではないかと葛藤しているが、仕事を進めていくうちに、談合が必要悪である、そして会社にいる自分にはそれを受け入れることしかできないと悩むようになる。
二千億円近くになる公共工事の地下鉄敷設計画の入札に向けて、なぜか若い平太が前線に立たされ、他社と交渉していく。
ふざけて見えるが仕事のできる先輩・西野や、平太の異動を決めた、読めない常務・尾形、ゼネコン各社の裏の世界、そのトップにいる三橋に、公共工事に関わる情報を流す政治家、そして談合を取り締まる機会を狙う検察。彼女の萌を狙う優秀な銀行マン・園田、病に倒れる母親・・・・
多くの登場人物たちの策略や想いが交錯し、最後までどうなるかわからない、ミステリーでした。
「談合は必要悪か?」このテーマをリアルに、しかし読みやすく書いた作品です。
○感想
読み始めると止まらないおもしろさで、一気読みしてしまいました!
談合は悪、とはいえ仕方ないだろうと、読んでいて少しずつ思ってしまうんです。段々と業界の考え方に染まっていく平太に共感し、葛藤する悪の根源である長老的存在・三橋にも同情してしまったり。
三橋が、悪いことをして利益を得てきた過去と、しがらみから逃れられないことを、単純に自業自得だと見下せないのは、なぜでしょうか。
正義を振りかざす恋人・萌の感情の変化も面白い。社会人4年目になり、お酒の趣味は学生の頃のままだったり、仕事を俯瞰して見られていなかったりする(そう思えてしまう)、長く付き合った彼氏が退屈に思えるようになる時、少し年上の、同じ業界にいる先輩男性に憧れてしまうなんて、あるあるすぎる。
すごい人と付き合えるかもという喜びと、しかしすごいのは私ではなく彼なのだという虚しさに、うわ〜リアル〜〜!!ってなりました。それで勘違いしちゃう人いますよね。どんな人と付き合おうと、自分の価値は変わらないのに。
検察の調査や最後の結末等、伏線回収も面白く、ミステリーとしてもめちゃ面白かったです!
○やること
自分の勤め先の過去ニュースを読む。うちの談合も、仕方ないことだったんだろうか。
おしまい。
政治献金はこちらの話でも。
本『生き方』-やっぱり理念が大事
憧れの先輩と採用について話していたときに、「俺は稲盛さんより松下幸之助派だな〜」と言われたものの、どちらもちゃんと知らなくて恥ずかしかったので読みました。
○著者
1959年4月、資本金300万円で京都セラミック(株)(現京セラ(株))を設立。素材、半導体、電子部品から完成品、システムに至る幅広い製品群を持つ世界有数の優良企業に育て上げ、現在は名誉会長を務めている。また1984年には電気通信事業の自由化に即応し第二電電(株)を設立。・・・
(引用元)
○内容
0.プロローグ
人生は魂を磨くための時間。
「才子、才に溺れる」ということわざがあるように(ネットで調べるとヒットしなかったのですが)、才能があっても理念・哲学・理念がなければ失敗してしまうものである。
稲盛さんは、「人として正しいことを追求する」という指針があるから成功したと言います。
仕事を通して魂を磨く、修行と捉える。知識の使い方を誤まるのは、哲学を見失っているからである。
1.思いの力
欲しがるものにしか手に入れられない。ただし並ではなく狂うほど思うこと。思いがあれば行動に繋がる。(流れ星の理屈と同じですね。流れ星が見えた瞬間お願いできるほど、普段から思っていることなら当然叶うというもの。)
思いは強く、計画は慎重に、実行は大胆に。
人生は一日の積み重ねだが、才子はなまじ先が見えるが故に最短距離を行こうとして一日を疎かにしがち。結局は創意工夫しながら努力を続けていくことが重要である。継続と反復は異なる。
2.原理原則
判断基準が定まっていたら経営も人生も、長い目で判断することができる。世の風潮に惑わされない。しかし言うは易し、行うは難し。絶えず戒め自省自戒すること。
人生の結果=考え方×熱意×能力
(心技体ですね!)
燃えるには好きであることが一番。
人間として正しいこと、世のためになることをしたいと考えることは、文化・宗教が違えど普遍的な価値があります。世界共通の判断基準、原理原則といえます。
3.心を磨く
西郷隆盛が「徳高き者には高い位を、功績多き者には報奨を」と言ったように、本来リーダーには徳が高い人を置くべきです。しかし最近はトップの不祥事が多く、これは功績で評価し職位を定めているからでしょう。
心を磨くには六つの精進が必要です。
①誰にも負けない努力をする
②謙虚に驕らず
③反省ある日々を
④生きていることに感謝する
⑤善行、利他行を積む
⑥感性的な悩みをしない
4.利他の心
会社に文句があるのは「してもらう」立場だと思っているからだ。「してあげる」側になれば周囲にどう貢献していくか考えられる。
利他的であるためには会社のために働こう、と考えるべきですがしかし、自分の会社「さえ」良ければ、と考えてはまたそれもエゴにすり替わる。
40年ごとに日本の歴史を見ると、利己的な日本「さえ」富めば、強くなればと考え失敗してきたことがわかる。
1868年-明治維新、富国強兵を目指す
1905年-日露戦争勝利、軍事大国の道まっしぐら
1945年-第二次世界大戦敗戦、富国を目指し経済成長
1985年-プラザ合意、この頃経済大国としてピーク、崩壊後低迷。
(本には書いてありませんが、2020年コロナショックもこの40年の節目と言えそうです。)
このことから、経済成長主義を脱する新たな国の理念が必要といえる。
5.宇宙の流れと調和する(スピってきた…)
運命と因果応報。
心の多重構造。
①知性
②感性
③本能
④魂
⑤真我
○感想
『ホモデウス』に書いてあったことみたいだと思いました。技術が発展しても、それをどう使うかは宗教(この本の中では考え方のことを宗教という)によるというもの。
今回の本の方が、かなりスピってましたが…。
一貫して自分を磨け、修行しよう、というメッセージを主張していましたね。松下幸之助より宗教的です、でも結局は同じことを伝えているように思いました。
燃えるためには好きであることが一番、という話が苦しかったです。努力は夢中に勝てないと言いますが、夢中になれるのも才能だと思うんですよね、、稲盛さんに言わせると没頭するまで物事に向き合えていないからなのでしょうが、、、苦しい!
○やること
しごとをとにかく一生懸命やります。そして倫理観を失わないこと、磨くこと。
おしまい。
イベント『真のリベラルアーツ:今後の日本が生き残るために必要となる教育』ーものごとをコネクションするための鍛錬
外出自粛で退屈なゴールデンウィーク中、ネットでうろうろしていて見つけたイベントです。社会人になってからたまに耳にするようになった「リベラルアーツ」。一体なによ、と思いながらも勉強できていなかったので、今回イベントに参加してみました。(オンラインイベントが増えたのは、この外出自粛の状況下、怪我の功名だと思います。)
◯登壇者
武内隆明
(タイガーモブHPより引用)
1961年生。父の仕事の関係で小学校はフィリピン。中学・高校は東京で、大学はマサチューセッツ州にある、全米屈指のリベラルアーツカレッジであるWilliams Collegeを卒業。その後、野村證券国際調査部、ゴールドマン・サックス・アセットマネジメントなどを経て、チューリッヒ・スカダー・インベストメンツ副社長、プルデンシャル・ファイナンシャル・アドバイザーズ証券の社長を歴任。2003年に独立。東京で投資会社、上海で経営コンサルタント会社を起業。2012年からは教育業界のNPO法人Teach for Japanや、International College of Liberal Arts(iCLA) の立ち上げをサポート。ライフワークとして、アジアの若者へのリベラルアーツ教育に取り組んでいる。他にも日本におけるユニークな高校や大学および金融機関等を特別顧問や客員教授としてお手伝いしている。
ものすごく早口でパワフルな方でした。
◯内容
・リベラルアーツとは
ギリシャ・ローマからルネサンスにかけて始まり、17世紀エリート教育に発展。文法学、論理学、修辞学、幾何学、数論、天文学、音楽の7つの学問を扱う。
リベラルアーツ・カレッジは17世紀ごろ作られたものも多く、2000人程度の生徒が在籍する。西海岸に位置するものが多い。卒業生はオバマ、レーガン、孫正義、津田梅子、クラーク博士等日本にゆかりある人もいる。
・リベラルアーツの目的
人が持てるものには「知識」「知恵」「生まれつきのもの」がある。
「知識」は1万時間程度勉強すればある程度言語習得できるというように、 比較的簡単に身につくもの。しかしある場面でしか使えない。例えば日本語を勉強しても、日本語を話せる人との間でしか使えない。
「生まれつきのもの」これは生理的なもの(性別とか人種とか)や気質で変えにくい。
「知恵」こそがリベラルアーツ。知識と生まれつきのものとの間にあり、知識をいかせるようになる鍛錬のことである。なにかを知っていても、それをうまく活用するためには質の高いOS=人間力?が必要になる。
・リベラルアーツが目指すもの
「チャレンジ精神、課題発見力、主体性、実行力・継続力、熱意、意欲、柔軟性、ストレスコントロール力、コミュニケーション能力、協調性、倫理的思考力」の向上。
これらの能力・知恵を身につけて活用できるまでになる鍛錬をする必要がある。この意識せずに使えるようになる鍛錬=武道や茶道、花道といった「道」を極めるようなもの。
・リベラルアーツ教育
現在のリベラルアーツ教育は「社会科学」「自然科学」「人文芸術」「保健体育」「ワークショップ」のそれぞれを学び、それらをいかに繋げるかをトレーニングするもの。一般的に理系と文系とどっちもやる学部でしょう、と言われるけれど、それは誤解である。
上記の能力を身につけた上で、左脳と右脳をコネクションするトレーニングをする。
左脳:「定量推論」論理的、緑線的、構造的、規則性、固定的、講義。
右脳:「人文教養」非論理的、芸術的、非線的、非構造的、起業家的、柔軟、ワークショップ
このコネクションが発揮され、大きな結果を残した例を示す。
●アルバート・アインシュタイン:物理学×音楽
「相対性理論は直感的方法によって発想された。そして、音楽はこの直感を支える原動力だ。私の新たな発見は音楽的知覚の結果なのだ。」
●スティーブ・ジョブス:カリグラフィ×エンジニア
「人は私がクリエイティブだという。もしそうであるとしたら、それは、私がたくさんの「点」を持っていて、どのようにそれらを繋げるのかを知っている、ということだろう。」
●本庶佑:医学・生物学×オーケストラ経験
●レオナルド・ダ・ヴィンチ:絵画以外の工学や解剖学等多岐にわたる活躍
異なるテーマが繋がることはあり、例えばダンスと音楽なら親和性が高いが、生物学と音楽がどう繋がるのか。この一見親和性のないところに価値が生まれるようにするのが人であり、発想することは人工知能にとって変わられないはず。その発想する力を引き出さすのがリベラルアーツである。
世界平和へのアプローチにはかつて経済学が強かったけれども、実際は音楽(ジョンレノン・イマジン)や芸術(ピカソ・ゲルニカ)が大衆へ影響したり、生物学的に男女の喧嘩を分析したりとやり方は多い。現在注目されるSDGsについても、環境化学のみならず、東洋哲学からアプローチする方法だってあるのだ。
その多角的なアプローチがあることを忘れないようにしなければならない。固定観念に縛られず自由に発想するには、異国の文化に触れたり、たくさんの人の本を読んだり、意識的に視点を広げることが重要。
例えば、以下の文字を読めるか。
(出典:読める?読めない?「幻視」を防ぐ「白地文字」読みに挑戦!/脳トレ | 毎日が発見ネット)
・グローバル競争への心構えと
中国深センの発展。中国のシリコンバレーと言われるITの聖地であり、20、30代が6割、起業数世界一、街全体がキャッシュレス社会で、社会インフラのIT化も進んでいる。
そんな背景がある年都市では、企業が「多産多死」。人口が多い分チャレンジする人が多く、ハングリーさがある。そのハングリーさは自信・自己肯定感の高さにより支えられている。(これは日本人の弱いところ。出る杭は打たれる、自信を潰そうとしてくる文化。完璧主義でチャレンジしにくい環境。)そんな状況下であるのに、危機感どころか中途半端な知的優越感を感じている。
こちらの本でも扱われてましたね。
途中でジョークが。日本のPDCAは「Plan,Delay,Cancel,Apologize.」
投資家的な目線で見ると日本は着実に人口減少するし(世界各国と比べでダントツ。世界全体は2060年までに人口が30%以上増加するのに、日本は−30%以上。)、そうなるとマーケットが縮小、チャレンジする人が減り、スピードが遅くなる。GDPは中国・インドがブチ抜いて足元にも及ばなくなる。
PwC、調査レポート「2050年の世界」を発表し、主要国のGDPを予測‐2020年以降、中国の成長は大幅に鈍化するものの、世界の経済力の新興国へのシフトは止まらず | PwC Japanグループ
・その他質疑、雑談
八ヶ岳連峰作戦:8割の出来のものをたくさん持つ。一つのことで百万分の1は目ざしにくい。技術革新はもっとスピードをあげて進む。
インフィニティ国際学院おすすめ。高校性に海外で修羅馬をくぐらせる。
もちろん読書と旅行でも異文化経験はできるけれど、その旅行先のことを勉強してから行った方がいい(世界の歩き方2、3回読んでから行くらしい)。
おすすめの本「ライカでグッドバイ」「コロナショック・サバイバル」「貞観政要(中国古典の教訓)」
芸術・いま流行のテーマ・昔から言われている古典のような本というのをバランスよく読むのがいい。
メンターはひとだけじゃない。本や映画もある。相談に乗ってもらわなくても、あのひとならどう考えるかなと考える人がいたらいい。
コロナでも震災でも新しい課題がドンドン出てくる。リベラルアーツで自分の頭で考える力をつけよう。「(出来ごとの)新しさの本質を洞察して、歴史的な法則を当てはめて、想像力を使って前進する。」
社長になれば自由だと思っていたけれど、自由さやリーダーの意味って国によって違うことがわかった。例えば日本はアメリカ的なのでひっぱって行く人、ドイツでは独裁者のような危険なイメージがあったり。いいビジネスマンはいいリスナー。
◯感想
なんとなく教養って大事だよな、リベラルアーツってそういうやつだよな・・・と思っていたのですが、セミナーを聞いて誤解していたところは修正され、なぜリベラルアーツが必要なのか、どうやっていかすものなのかを理解できました。話題としての教養ではなく、そこから着想を得たり、新たな視点にしたり、現在を歴史の一部と捉えたり。
私は頭が凝りかたまっていて、ものごと一つ一つに線を引いて分けてしまいがちなのですが、もっと横断的に考えられるようにトレーニングしなきゃなあと焦りました。たくさんのものごとを見て知っていくだけでも、考え方は広がっていくし、自然と知識をつなげていけるものなのだろうか。
また、ただ広く浅く学んでもあまり意味がないよなとも最近感じています。やっぱりパワフルで優秀なひとって、興味を持って深堀していっている気がする。努力は夢中に勝てないと言うけれど、いちいち夢中になれる体力・精神力のトレーニングも私に必要なものの一つだなと思いました。やっぱ座禅?
◯やること
・オンラインでの交流
今回の講演はPeatixというサービスで見つけました。外出自粛が続く中、オンラインでの機会が増えていて、これを活かさないわけにはいかない。
セミナーでも、Web面談でも、双方向のコミュニケーションが取れるものを選んでいこうと思います。(動画視聴は満足感があるものの、理解度が浅くなる気がしていて少し苦手です。)インプットした気になって、頭でっかちになって、その割に語れはしないという状態にならないように、アウトプットする場に出て行こう。
・並行読書を続ける
バランスよく。音楽美術に精通する人はかっこいいよなーと、「トヨトミの野望」を読んでも、会社の大先輩と話しても思ったので、ちょこっとずつでも勉強します。いっきにまとめ本読むより、ひとつひとつが深堀してある本にしよう。
・英語の勉強
数日前から始めましたが、中学英語からやりなおしています。ひとつの言語しか使わないということは、2つのリスクがあると考えるようになってきました。この気付きは構造主義の本を読んだ影響をうけてのもの。
情報源が限られて一方向からしかものごとを知ることができなくなるリスクと、 その文化圏特有のものごとの見方に縛られてしまうというリスク、他国の言語を学ぶことで少しでも減らせるといいなー。
おしまい。