本『鉄の骨』−正しさとは何か?談合は必要か?
ZOOM朝活でお勧めされた本、その1。
(在宅勤務が続いているけれど、朝ダラダラしちゃってたところ、知人に誘われ先週からZOOM朝活に参加しています。オンラインだと気楽で良いですね。)
私の勤め先も、過去談合で刑事告発されており興味がありました。
それから気になったのは、働き始めて4年目、違う会社に勤める友達と考え方がずれていくことが描かれてるという紹介をされたので、ちょうどいいなあと思い。就活の時すでに感じてたけれど、働きだすとなおさらですね。
○著者
池井戸 潤
岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。
「果つる底なき」(講談社文庫)で江戸川乱歩賞、「鉄の骨」(講談社文庫)で吉川英治文学新人賞、「下町ロケット」(小学館文庫)で直木賞を受賞。
他の作品に、『半沢直樹』シリーズ①「オレたちバブル入行組」、②「オレたち花のバブル組」、③「ロスジェネの逆襲」(すべて文春文庫)、④「銀翼のイカロス」(ダイヤモンド社)、『花咲舞が黙ってない』原作本「不祥事」、「空飛ぶタイヤ」(それぞれ講談社文庫/実業之日本社文庫)、「ルーズヴェルト・ゲーム」(講談社文庫)、「民王」(文春文庫)、「下町ロケット2 ガウディ計画」(小学館)、「七つの会議」(集英社文庫)、「なるへそ」(Kindle Singles)などがある。
7月8日発売予定の「陸王」(集英社)が最新刊となる。
(Amazon.co.jpより引用)
○内容
中堅ゼネコンで働く、4年目社員の富島平太。
3年間現場監督として働いていたが、突然談合課と呼ばれる部署への異動が命じられる。なぜ自分がそこで働くことになったのか、そしてなぜ会社が談合を続けているのかわからないまま働き始める。
銀行勤めの同級生、野村萌とは学生時代からの付き合いである。社会人になってから恋人になり4年、遠慮もなく安心感のある関係になっていた。
しかしそれぞれ仕事を経験していくうちに、考え方にズレが生まれていた。平太が談合に関わっていることを知ると、萌は“銀行的な”批判をする。平太自身も間違っているのではないかと葛藤しているが、仕事を進めていくうちに、談合が必要悪である、そして会社にいる自分にはそれを受け入れることしかできないと悩むようになる。
二千億円近くになる公共工事の地下鉄敷設計画の入札に向けて、なぜか若い平太が前線に立たされ、他社と交渉していく。
ふざけて見えるが仕事のできる先輩・西野や、平太の異動を決めた、読めない常務・尾形、ゼネコン各社の裏の世界、そのトップにいる三橋に、公共工事に関わる情報を流す政治家、そして談合を取り締まる機会を狙う検察。彼女の萌を狙う優秀な銀行マン・園田、病に倒れる母親・・・・
多くの登場人物たちの策略や想いが交錯し、最後までどうなるかわからない、ミステリーでした。
「談合は必要悪か?」このテーマをリアルに、しかし読みやすく書いた作品です。
○感想
読み始めると止まらないおもしろさで、一気読みしてしまいました!
談合は悪、とはいえ仕方ないだろうと、読んでいて少しずつ思ってしまうんです。段々と業界の考え方に染まっていく平太に共感し、葛藤する悪の根源である長老的存在・三橋にも同情してしまったり。
三橋が、悪いことをして利益を得てきた過去と、しがらみから逃れられないことを、単純に自業自得だと見下せないのは、なぜでしょうか。
正義を振りかざす恋人・萌の感情の変化も面白い。社会人4年目になり、お酒の趣味は学生の頃のままだったり、仕事を俯瞰して見られていなかったりする(そう思えてしまう)、長く付き合った彼氏が退屈に思えるようになる時、少し年上の、同じ業界にいる先輩男性に憧れてしまうなんて、あるあるすぎる。
すごい人と付き合えるかもという喜びと、しかしすごいのは私ではなく彼なのだという虚しさに、うわ〜リアル〜〜!!ってなりました。それで勘違いしちゃう人いますよね。どんな人と付き合おうと、自分の価値は変わらないのに。
検察の調査や最後の結末等、伏線回収も面白く、ミステリーとしてもめちゃ面白かったです!
○やること
自分の勤め先の過去ニュースを読む。うちの談合も、仕方ないことだったんだろうか。
おしまい。
政治献金はこちらの話でも。