スペインとフランス革命を知る-映画『宮廷画家ゴヤは見た(Goya's Ghosts)』
芸術に疎いので勉強。
※ゴヤって誰?
フランシスコ・デ・ゴヤ。スペイン最大の画家と言われています。18世紀末、宮廷画家としてカルロス4世に仕えました。大聖堂の天井装飾をしたり、風刺画を書いたり。
『カルロス4世の家族』
左上奥がゴヤ。
◯監督
ミロシュ・フォアマン(1932−2018)
『カッコーの巣の上で』『アマデウス』の2作品でアカデミー賞を受賞しています。プロテスタントの義父母に育てられたけれど、実の両親はユダヤ人で、ともにナチスの収容所で死亡しているという複雑な生い立ちを持ちます。
◯内容
18世紀末、スペイン最高の画家ゴヤ。
その風刺画は聖職者を批判するものもあり、教会から非難されていました。かつてゴヤは教会の天井画を書いていましたが、天使の絵のモデルが売春婦ということも発覚、そのことも批判されています。
その彼から見た当時のスペインを描いています。ゴヤ自身も登場します。
当時カトリック教会の支配力は強く、異端者を殺すべきという「異端審問」が行われていました。その対象は過激で、科学者も異端者と思えと言います。(神を否定するものはすべて対象者としてたのだと思います。)
物語はロレンソ神父という下衆な男と、若く美しい商人の娘・イネス(ナタリーポートマンの演技がすごい!)を中心に進み、ゴヤから見た当時のスペインの様子が描かれています。
ある時豚肉を食べなかったことからユダヤ教徒だと誤解されたイネスは、異端審判に呼ばれます。(この異端審判の拷問シーンが見ていられないほどキツい。)そして投獄され、家族に会えなくなり弱ったところに、ロレンソ神父が訪れます。同情し共に祈ろうと寄り添い、イネスの気持ちを惹きつけます。頼るところないイネスは、神父に好意を抱いてしまい、獄中で神父と関係を持ち娘を授かります。
しかしこの投獄自体、ロレンソ神父の仕組んだことでした。若く美しいイネスに近づくために、教会の力を利用し彼女を裁判にかけたのです。
イネスの家族は、ロレンソ神父を怪しみ国王に直訴します。結果ロレンソはスペインを追われフランスに逃げることとなりました。
その後に隣国フランスにて、革命が起こります。それはスペインにも影響していきます。
当時スペイン国王はフランス人、女王はイタリア人ということもあり、市民が反逆を起こすのです。
市民はフランス革命の思想、自由・平等・友愛を伝えるために戦うのですが、その思想を貫くために、否定するものは断罪する、神父まで投獄するという過激な戦争が起こります。
このフランス革命の影響を受け、カトリック教会は権力を失います。異端者審問にかけられ、投獄されていたイネスも解放されました。そしてイネスはロレンソ神父と、彼との娘を探します。しかし結局イネスは娘に出会うことはできませんでした。
スペインの混乱は続き、再びカトリック教会が権力を持ち直した頃、ロレンソ神父は反逆の罪により、王の前で公開処刑されます。
この一連の出来事を、ゴヤの目を通して描いた作品です。
実際ゴヤは宮廷画家として、覇権がどんどんと変わるスペインの様子を見て来ていますし、人々が思想のために戦う様子を描いています。
『マドリード、1808年5月3日』
◯感想
拷問が辛くて、見ていられませんでした。なんか昔魔女展行ったなーと思い出したり。拷問道具もえぐいんよなあ。。。
ただ、調べていくとこの異端審問は魔女を対象外としていたそうで(精神病として扱っていた)、それはなぜかとまた興味が湧いてきて、Wikipediaサーフィンしてしまいました。おもしろい。
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なお、魔女狩りは異端審問の形式を一部借用しているが、その性格(異端はキリスト教徒でありながら、誤っているとされた信仰を持っている者であるのに対し、魔女・魔術師(魔法使い)はそもそもキリストを信じないとされる人々であるため全く別種)や実施された地域・時代が異なっているため、異端審問とは別種のものと考えるのが適切である。(引用元:
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宗教!とか、ある国の歴史!とか、大き過ぎる枠組みで勉強しようとしていたけれど、こういう細かく深く見て行く方が面白そうなのに気づきました。
昔行った魔女展。↓
(2016年!もうそんな昔なのか…)
映画を見たけど、より細かく知りたいと思って本でもフォロー中。彼の版画に「私は見た」と詩書がみられるそうで、これがタイトルになってるんだな〜とまた面白く感じたり。
○やること
フランス革命が周囲の国や人々の暮らしにどんな影響を与えたのか、いま並行して読んでいる世界史の本で、体系的に整理します。
おしまい。