みたら書く

本や映画の感想を書きます

映画『スキャンダル Bombshell』-フィクションじゃない。

女性蔑視を扱う点で良い映画。

考えるところが多過ぎて、感想は支離滅裂になってしまいました。

 

○内容

 

事実に着想を得たフィクションです。元ネタはこれ。

 

フィクションということになっていますが、実際はほぼノンフィクションです。

 

テレビ局FOXニュースのCEO・ロジャー(ジョン・リスゴー)は、キャスターに抜擢の可能性を匂わせながら、性的な行為を強要することを繰り返していました。拒もうとすると契約更新しないことを匂わせたり、人気のない番組に降格させたりするため、キャスター達は簡単に拒否できません。

かつてロジャーを拒否し降格されていたグレッチェン(ニコール・キッドマン)は、自身の番組内でロジャーの意図に反するチャレンジをします。例えば世界ガールズデーだからノーメイクで番組に出る。女性を客体化するのをやめようという。(女性の客体化?↓)これに対しロジャーは「更年期で汗だくの、テカッた顔を見せるな。早くメイクしろ。」なんて言いながらドーナツを貪る。…

ロジャーに反抗した結果、グレッチェンは解雇され、そののちにロジャー個人を、『性的な行為を強要し、それを拒絶された結果として自身を解雇した』と訴えます。

 

一方、野心的な若手のケイラ(マーゴット・ロビー)はロジャーの要求を受け入れ、人気番組に出ることができるようになっていました。しかしグレッチェンの訴えが報道された後、自身の選択は正しかったのか葛藤します。

 

そして人気キャスター・メーガン(シャーリーズ・セロン)。FOX社内はグレッチェンの訴えを受け、内部調査を始めます。メーガンは当初沈黙し、かつて自分にもロジャーの誘いがあったことを隠しますが、ついにはそのことを告白します。更には同じ経験をしたものがいないか社内を調べ、当時ロジャーと関係のあったケイラにも接触します。

 

FOX内外からロジャーに関して多くの証言が寄せられ、訴訟を起こしたグレッチェンは勝訴。ロジャーはFOXを解雇されます。

 

 

…映画を見るとき、登場人物の役名も、俳優も覚えられないので困ってます。邦画でもそうですが、洋画では特に。すごく有名な人でも全然わかんないし、最近特殊メイクがすごくて、もう無理…。閑話休題

 

 

○感想

 

こういう話が、映画の題材にされるのは良いことですね。多くの人が問題意識を持つきっかけになります。ただなんとなく違和感があったのが、この映画が「衝撃のセクハラスキャンダルを描く」と宣伝されていたこと。セクハラ…?

性的な関係を強要することだけがセクハラと思われる、誤解を招くのではないかと不安になってしまいました。

 

作中ロジャーは、過去仕事関係の女性複数名と性的な関係を持ったことについて、『(彼女達が自分と関係を持ちたがっているかどうかは)目を見ればわかる。あの頃は皆そんな目だった。今は太っているが昔は…(そこそこ俺もイケてたんだよ)。』という発言。本当にやめてほしい!本気で言ってるとしたら怖すぎる!こんな誤解をしている男性多いのかな。作中の流れとして、関係を持った女性達は権力を振りかざされて従ったのみのようです。

 

セクハラ含め多くの性被害に悩む人に問いたいのは、私たちは"思わせぶり"なのしょうか。作中メーガンがロジャーに誘われたという過去を告白したことに対して「それは君がセクシーだからだよ。」という男性がいました。その発言の意図がわからないのですが、もしかしてあなたはセクシーなんだよって褒めてるつもりなのか?勘違いされるようなことをしているあなたが悪いと説教しているのか?もしかして、痴漢されるのも女性が油断してるからなの?満員電車で体を密着させざるを得ない時にも、誘っていたなんて言われてしまうのか?

本気でそんなことを思う人はいる。そして勘違いされて被害を受けることがある。私たちの身の回りには多くのトラップがあるんですね。

 

男女差別やセクハラ問題について考える時、いつも悩むのは、私自身は女性であることで良い思いをしたこともあるのではないかということ。優遇された過去がありながら、堂々と批判できるのかということ。

振り返ってみれば、かつて優遇されたのって、人生がかかったような時ではありませんでした。例えば席を譲ってもらう、映画館のレディースデー、飲み会で偉いおじさんの近くに座れて、直接話ができる。…そんなことにどれ程の価値あるのでしょうか。例えば男性のように、入試で点差をつけられるような、人生における決定的な事柄で優遇されたという自覚はありません。(入試で点差?↓)

 

入試で下駄をはかされたわけでもない、就職試験で女性だから採用されたわけでもない(私の勤務先に採用されている女性達の出身大学は、男性に劣らないレベルであり、優遇されているとは考えられません。)。やはり優遇されてきたとは到底思えない。

ただ、自分にはまだ関係ないものの、産休育休をもらうときには、"優遇"されてしまったと悩むかもしれません。もしかして今だって、女性は地方に飛ばさないようにしようという配慮をされているのかもしれない。そんな事実があったら、私は女性が不遇なところにだけフォーカスして、批判していいのでしょうか。

 

ここまで自身の葛藤を書いてきましたが、このような考えを発信することは男性にはウケないでしょう。年代が上の人にもウケないと思う。多くの人が異性として魅力的なのは力のある男であり、従順な女(賢く見えるが自分よりは劣るとか、少なくとも自分より優位に立たないもの)と考えているのではないか、なんて考えるのは極論でしょうか。ウケない、ということは、聞く耳を持ってもらえないということです。(話を聞いてもらうために、従順な女を演じる必要もありませんが。)

自分に都合の悪い時だけ、自分が得しそうな時だけ、優遇されるよう振る舞った自覚はないのかと聞かれると、正直答えられない。しかも私が男女差別に違和感を感じるのは、自分に直接的な被害があったときだけ。こんなご都合主義な私には、批判的になる資格はないのではないか。

 

こんなふうに、いつも理想と現実をループして考え込んでしまいます。自分が悪いのか?優遇されてきたのではないか?男性だってつらいことがあるのでは?そもそも私にこんな大きな難しい話題を語る資格があるのか?…等と、女性ばかりがこのような不毛な悩みを抱えなければいけないことこそ、セクハラの一番の問題点だと思っています。

 

 

おしまい

 

 

関連

 

 

 

○面白かったブログ

 

 

 

○タイムリーなニュース

 

本『言い訳』

お笑いを分析している本です。どの業界にも評論家はいるんだなあと感心しました。わかりやすいし、著者の塙さんがM-1の審査員やるのも納得です。

ちなみに私はM-1グランプリを毎年見ているわけではありませんが、この本は十分楽しめました。見ている人はなおさらと思う。

 

○内容

 

<M-1対策>

◎評価されるもの

・新しい

・誰がやってもできる

  ネタ自体が面白ければいいという考え。個人に頼るもの=キャラクターが強いネタで、いいネタとは言えない。

・個人が見える

  「誰がやってもできる」と相反するが、ネタをやってる本人の性格を潰すようなのはだめ。例えばサンドウィッチマンチュートリアルは、このネタをやってること人達は、こんな人間性なんだろうな…と想像できるのが良さである。かつ、本人達にやらされてる感がなくのびのびとしている方が良い。

・4分のステージのうち、最初の30秒で受ける

  最後にかけて一気に盛り上がり回収するネタには、4分の制約は不利。

・強い!

  4分の舞台で、インパクトのある分かりやすいツッコミは強い。ナイツの静かな漫才に対して、霜降り明星のツッコミは『強い』。

 

◎評価されにくいもの

・キャラが強い

・小ネタ

  ライブハウスならお客さんいじったり、内輪ネタで喜ばれるけど。

・うまさ

  これは変わりつつある。若手で新しいものを見せれば、荒削りでも評価されていたが、今は結成15年までと間口が広いため、うまさも無視されない傾向(第十回までは結成10年までだった)。

 

M-1は吉本のもの、つまり関西芸人のために開催されている。関東芸人に対して門が開かれているだけであり、ルールは当然関西風。

 

おもしろかったのは、お笑いにもファームがあること。フォームを発明できれば売れる。例えば、

・ヤホー漫才(ナイツ)

ノリボケ漫才(ハライチ) 

・ズレ漫才(オードリー)

  このフォームを見つけた時、若林は「売れちゃう」と思ったそう。

・妄想漫才(チュートリアル)

・ツッコミが笑いを笑いを取る(南海キャンディーズ)

  山ちゃんが初めてなんだそう、ボケが華、ではない漫才は。

笑い飯笑い飯はダブルボケではなくて、笑い飯ってジャンルだね、って書いてました。

 

ただ、インパクトのあるフォームもM-1では不利。たとえばオードリーは準優勝した翌年以降は出場はしなかった。新しいものを求めるM-1では評価されないから。

 

 

○感想

 

どの世界も真剣に取り組むと奥深いものです。なんとなく見ていたお笑い芸人さんも、漫才を深掘りする、その姿勢は真剣そのもの。なのに語り口がなんとも面白いというのは、芸人さんならではの才能なのか、習性なのか。

 

やっぱりお笑い芸人が書いているのだから、さすが面白い本になっています。さくっと読めるのでお笑い好きな人は是非本を読んで欲しいです。

 

おしまい

 

言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか (集英社新書)
 

 

 

本『センスは知識からはじまる』-やっぱりアウトプットの前にインプットが必要

もらった本です。自分で選ぶと趣味が偏りがちなので、もらったり借りたりすると目線を変えられて良い。

 

 

○内容

 

「学んで活かす」これは美術を含む全てのことに当てはまります。歴史に詳しい、とは言いますが歴史が上手い、とは言いませんよね。学問としての美術にも「上手」なんてないのです。学生の頃、学問と実技とごちゃ混ぜにされていたから、勘違いが生まれているだけ。

 

センスというのは、物事の背景を知り、理解をしたうえで応用するスキルのことであり、才能のことではありません。知識をつけるために学び、それを活かすことができれば、その人はセンスがあると言えるのです。

 

著者は時代によって求められる力は変わり、今は企業にもセンスが求められている、と書いています。これまでは技術や勤勉さが評価されていましたが、センスでそれを活かすタイミングが来ていると。時代が交互に来るという考え方は面白かったです。

例として「アーツ・アンド・クラフツ運動」。生活と芸術を統一させようという活動です。18世紀半ば、イギリスでは産業革命により、大量生産の安かろう悪かろうな品があふれました。その中でウイリアム・モリスは手仕事に戻ろうとしたり、質の高いインテリア製品を量産したりとした。(壁紙が有名ですね。)このように一気に技術が伸びて、伸びが緩やかになる頃に、センスの時代が来るそう。

 

 

また、お客さんに意見を求めることは、可能性を潰すことになります。例えばiPhoneを全く知らない人に、これどうですか?と聞くのは無意味でしょう。市場調査から始める商品開発も同じですね。

 

 

○感想

 

学問としての美術に、上手い下手はないというのが腑に落ちました。音楽も同じで、上手に演奏できる(実技)ことと、その作家のことや時代背景を知っている(学問)ことの両方が大切だったと思い出しました。学がないと上手く演奏するというのもできないし。

 

また、理念を具現化する力がセンスなのかなと思いました。

常々思っている、「知識があれば世界の解像度が上がる」というのに加えて、「知識がなければ良いものは作れない」という意識が持てました。ただ、知識を貯めていっても使わなければ忘れていくばかりなので、もうちょっとアウトプットの練習をしたいな。このブログもその場の一つとして活かそう。

 

 

今仕事で新しい商品を作ろうとしています。まさしく市場調査だのマーケティングだのと、外側から考えていましたが、この本によると、自分がいいと思うものを起点にすることでよりクリエイティブになれるのではないか思えました。ただやっぱり、知識量が絶対的に足りない。センスの良いものを作ろうと思うなら、やっぱりもっとインプットしなきゃですね。社内のことも、市場のことも、技術も資金も営業のことも。。

手当たり次第に学ぼうとしていますが、それぞれ浅くなるばかりで、一極集中して専門を強くしていくべきなのかなと悩みます。でも大学生の頃、専門家にはならないと考えて、大学院に進まないことを決めたことを思い出してしまいます。その頃の考えから変わっていません。やっぱりまだ専門的にはならない方向でやっていこうと思います。その分広く学んでいかなきゃですね。

 

 

おしまい

 

センスは知識からはじまる

センスは知識からはじまる

 

 

 

簿記二級を受けた話

簿記二級を受けてみました。

本や映画の話題からずれますが、たまには。

 

 

○簿記とは?

 

『簿記は、企業規模の大小や業種、業態を問わずに、日々の経営活動を記録・計算・整理して、経営成績と財政状態を明らかにする技能です。』日本商工会議所ホームページより。

 

帳簿に記すで簿記。財務諸表(貸借対照表損益計算書等)を作ることができ、一定期間でどれだけお金が動いたか示すことができます。

 

 

 

○受けた理由

 

去年秋ごろ、ふと、企業に勤めていながら、その経営状態ってどうやったらわかるものか、全く理解していないことに不安をいだきました。学生の頃読んだ就活本に、資本金を見るといい、なんて書いてありましたが、その本質もよくわからないままでした。

本屋さんに行って、目についた本をパラパラすると「財務諸表」見るとわかるらしいことがわかりました。でも財務諸表がまずわからん。じゃあ簿記の勉強からか!という安直な発想で勉強を始めたのですが、案外楽しかった(最初は)。そして重かった。受験までしなくてもよかったかもしれないと途中後悔しました。

でもわかりだすと楽しいです。

 

 

○取り組み

 

平日の通勤時間にテキストを読み、休日に問題集を解きました。

 

基本的にはこのまとめにならってやりました。

 

11月初旬.中古のテキストを買う。

11月中旬.電車でテキストを読みはじめる。

1月中旬.3級と2級(商業簿記)のテキストを半分くらいまで読み進める。この頃初めて手を動かして問題を解いてみて、ちょっとやばいなと思って加速した。そこから工業簿記を先行して読み進め(ちょっと仕事に近くてわかりやすかった)、また土日に手を動かすのを繰り返しました。

試験は2/23。1月半ばから急に仕事が忙しくなり、なかなか切羽詰まった中で受験をしました。

 

試験結果は3月上旬に発表されるそう。多分ダメなので、4ヶ月後再チャレンジします。

 

○感想

 

やっぱり、いつまでにあのレベルまで知識をつける!と決めて勉強することは、私に合っているように感じました。受験勉強スタイルが染み付いてるのは良くない気がするけれど。

知識はついたのでやっと積読していたこの本を読めます。この本の感想はまた後日載せます。

 

 

図解 簿記からはじめる企業財務入門

図解 簿記からはじめる企業財務入門

 

 



おしまい

 

本『福岡市を経営する』-企業と政治の共通項

現役の福岡市長が書いた本。

大学生の頃、4年間福岡市に住んでいましたが、こんな人が市長なんて全然知らなかった。政治に興味なさ過ぎるのを反省。

 

 

○内容

 

まず市長になってからの実績。

・スタートアップ、日本一の開業率

・人口増加率日本一

・地価上昇率が東京大阪の倍

博多駅前陥没を1週間で復旧

・屋台存続

 

めっちゃすごい。しかしこの多くの実績があるにも関わらず、「日本一で喜んでいてはいけない」と書いてありました。熱いな〜!

またこの実績も、結果を数字で示さなければ人がついてこないと考え、がむしゃらにやったからこそ積み上がってきたものだそうです。若いリーダーだからダメ、なんて言わせないという強い意志があるからこそ。

 

市は大きな規模で、その地域のビジネスを育てることができます。福岡市は国家戦略特区なので、国の規制が緩和されており、よりチャレンジングなことができます。著者は市として企業の活動を応援しています。

企業が新しい活動をすると、社会に受け入れられるための法整備、規制緩和が必ず問題になります。(例えば自動運転やドローン。)

また、市は税金を使わずとも、規制緩和で地域を動かすことはできます。(例えば数十年前に作られたビルの高さ規制を、今に合わせて緩和する。→高いビルを建てられることで、新しい施設ができたり、既存ビルを一新できる。)

 

 

以下、名言みたいなのをパラパラとメモ。要約しています。人を引っ張る立場にあるからか、そりゃ政治家はスピーチがうまいものか?良い言葉がたくさんありました。

 

「チャンスが来た時こそベストタイミングであり、いつか区切りがついた時にと考えていてはチャンスを逃す。」

 

「全員の満足ではなく、全体をよくする。平等ではなくて、公平になるように。」

 

「やっていることをブラックボックス化しない、見えるようにすることで納得してもらえる。リーダーにはその発信力が望まれている。」

 

「市がやりたいこと、ではなく、市民が求めていること、の形に変換して発信する。」

 

「これからの時代は大変、なんていうのは簡単で、これからを良くしていこう。という前向きさが、市民の幸福度を高めると思う。」

 

「批判よりも提案を、思想から行動へ」

批評家にはなにも変えられないという話。政治の世界に限らないことですね。これは耳の痛いやつ。

 

「彼を知り己をしれば百戦殆うからず。」

なんでもかんでも手を出して、中途半端にしても負けるだけ。自分の組織がどこまでやれるか把握しておくこと。

 

「自分たちの未来を自分たちの意思でコントロールできると言うのは、思い上がりである」

これはイスラム教の思想だそうです。自分の命は、神が望むように導かれるもの。著者はもともと国政に関わりたいと考えていたのに、市長になったのは、地域のリーダーという形で国に関わるよう導かれたのだと思っているそう。

 

スピリチュアルなの嫌いじゃないです。

 

 

 

○感想

 

熱いし勢いがあるし、実績に感情を乗せながら書いてあって、どんどん読めました。地元のことだからなおさら。

政治家と企業のマネージャーには共通する点が多いですが、政治家にしかできないアプローチというのも少なからずあり、その規模の大きさにワクワクしました。

 

また、今現在の取り組みとして、九州大学箱崎キャンパスの跡地を、超スマートシティとして活用しようとしているそうです。なにも知らなかった。。。

ただ、学生として通っていた当時、建物をバンバン壊しているのを見て、多少文化財として残さないでいいんかね…と切なくなっていました。今更ながら調べてみたら、結構面白い。そりゃみんな考えるよね。

 

地元のことを考えるの大事ですよね。ぼちぼち情報拾ってこう。

 

おしまい

 

 

福岡市を経営する

福岡市を経営する

 

 

 

本『アフターデジタル』-考え方をシフトする

2ヶ月近く、簿記の勉強に集中するためにブログをお休みしてました。(簿記はボロボロなので4ヶ月後再チャレンジする。)

 

○内容

「アナログな世界の一部がデジタル化するのではなくて、これからはデジタルな世界の中にアナログな機会が内包される。」

これがこの本のタイトル、アフターデジタルの意味です。今までは買い物しにお店に来ていた人がアプリを使っていたけれど、これからはオンラインで買い物する人がたまに店舗に来てくれる、といった逆転現象が起こるというようなイメージ。

 

章ごとにメモ。

 

1.事例

中国企業、特にスタートアップについて書かれていました。日本よりもキャッシュレス化が進んでいたり、うまくデータ活用をしていたりするよう。顧客の行動データを集めるためには、体験品質を高くすることと、それを長く顧客に寄り添わせることが必要になります。

 

「消費はモノからコトへ」と言われて長いですが、この「コト」を一過性のものとせず、継続的にデータを取ることを目指すのが、これからのデジタル時代になります。

 

2.学ぶべき視点

OMO(online-merge-offline)、この言葉がこの本の核です。オンラインが起点であり、リアルチャネルは深いコミュニケーションができる貴重な機会という考え方。オンラインとオフラインを分ける必要もない。インターネットも店舗もどちらもただのインターフェースという点で同じなのです。

 

オフラインがなくなり、すべての行動や思考がデータとして抽出されるようになりつつある今、現実がRPGゲームのように思えます。例えば信頼スコア。

日本では悪い面ばかり取り上げられているようです。

 

日本企業は、まだオフラインがベースにあり、オプション的にデジタル化させようという考えにとどまっているようです。しかしこれからはオンラインが起点となり、データを取って活用していくことがビジネスの基本となっていきます。その仕組み(=エコシステム)を作るために、既存のビジネスを再構築する必要があります。

 

3.既存概念を捉え直す

この章がすごく面白かった!

 

無人レジの本当の価値は何か?という話題。

決済は本来やりたくない作業であり、お客が求めているのはモノを得ること・サービスを得ることのみです。だから顔認識のデジタル決済や無人レジには意味があります。顧客は本当に欲しいモノ・サービスにのみ集中することができ、売り手もそこにリソースを当てることができるから。さらにデータ活用すれば個別対応をより深めることができ、よいサービス(=顧客体験)を繰り返せるため、さらにデータを集め続けられるというサイクルを生みます。

 

また、ものづくりの話題も。

ものづくりの視点では、顧客のニーズを理解し個別に高速に反応出来るプレイヤーが強くなります。例えば中国・深センにはものづくりをするために必要な設備や会社が集約されていますが、そこでは今までの「長い歴史と技術」が脅かされるほど、ものづくりの参入障壁が下がっています。そんな場所で素早く顧客ニーズを拾って、製品化されてしまったら?製造設備や研究設備を持っていても、動きの遅い会社は淘汰されていくのではないかと思ってしまいますね。

 

 

4.日本企業の変革

3章までのまとめ。日本企業はどうしていくか?

 

産業構造ヒエラルキーが変わり、データインフラが強くなり、顧客IDと繋がるプラットフォーマーが強くなります。そこを目指せばOKというわけではなくて、構造が変わる中でポジショニングどうするかを考える必要があります。

 

また、商品は顧客との接点の一つと考え、「顧客と繋がりデータを取り続けること」にビジネスの価値を置くようになります。前後の店舗での接触や、デジタルでの接触と同等のの機会であり、全ての接点を増やし、データを継続的に取ることが、次の顧客へ提供する価値をブラッシュアップしていくことに繋がります。

 

○感想

 

中国の例がたくさんあり、先に進んでいるのがよくわかりました。ただ単純にその成功例を自分の勤め先で活かせるとは考えにくい。さらに職業柄自分自身が顧客と触れることが少ないので、良質な顧客体験がなにか?想像できませんでした。 ぼんやりと思えたのは、今オフラインで顧客に多く接触していることは、今後オンラインが幅を利かせるようになったときに、強みになるのかなということ。足繁く通うとか、泥臭くやるというのは、アフターデジタルの中でより光るかもしれない。

理解しきれないところも多かったので、BtoB企業のデジタル活用が書かれている具体例を読みたいなと思いました。

 

また、なるほど面白い!となったのは、国地域によるデータへの考え方の違い。

EUでは個人のデータを私有財産と考え、守ろうと考えられています。それに対して中国は中央主権で、国民はデータを国へ提供する、国はそれを活用する、国民はその恩恵を受ける、という考えがあるというのです。

この考え方の違いって面白くて、根っこには文化の違いがあるんですよね。最近中国大好きマンと知り合って、国ごとに思想は違うし、それを理解できると面白いんだと知りました。今後はそういう文化論的な本も読んでみたい。

 

 

おしまい

 

 

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る

 

 

関連

 

本『マチネの終わりに』-知性ある人の狂うような恋

年末年始休暇のセルフ課題図書4冊目です。別に課題にしなくてもよかったな。期限を設けず、ゆっくり読みました。

 

これでとりあえず年末年始の課題図書はおしまい。

 

 

◎年末年始の課題図書◎

①12/30

『僕は君たちに武器を配りたい(エッセンシャル版)』

 

②12/31-1/2

『ストーリーとしての競争戦略』

 

③1/3-1/4

『株の学校 超入門』

 

④1/5-

『マチネの終わりに』

 

 

 

○内容

 

ギタリスト・蒔野聡史と国際ジャーナリスト・小峰洋子のすれ違う恋が描かれています。

二人は蒔野の演奏会で出会います。蒔野は人気のある天才ギタリスト、洋子はクロアチア人の父を持ち、パリを拠点に中東の取材をしているジャーナリスト。彼女は現地取材のためイラクへ行く直前に、この演奏会を聴きに来ていました。

最初の出会いからお互いに惹かれ合いますが、彼らの間には多くの障壁が立ちはだかり、運命に翻弄されていきます。

 

事実をもとにしており、2006〜2012年頃の世界情勢(特にイラク戦争リーマンショック)について細かく描かれていて、心を痛めるところもありました。

 

ちなみに作者・平野啓一郎さんは母校の卒業生。そうとは思えない情緒ある作家さんです。(母校は文武両道を謳うお堅い進学校なので。)

 

 

 

○感想

 

詩的なキレイな文体で、おしゃれな恋愛が描かれていました。教養とセンスのある会話をする二人がうらやましい。知性のない私が、頑張ってもスノッブになるだけと思います。クラシックを「がんばっていた」のだから、土台無理な話なのでしょうが、まだ諦められずにいます。知識だけでなく知性が欲しいものですが、焦りがちな私は表面的な知ることそのものに力を入れがちです。

 

文章があんまりステキだったのでいくらか引用。

 

「音楽は、静寂の美に対し、それへの対決から生まれるのであって、音楽の創造とは、静寂の美に対して、音を素材とする新たな美を目指すことの中にある。」

 

愛するという点では、常に洋子に先んじていて、育ちの悪くない情熱もあった。

 

育ちの悪くない情熱!

 

その天分の眩しさに対して、一握りの嫌な感情の存していることを、寂しい気持ちで認めた。

 

どこか本質的に自分を見失い、自らをすっかり相手に明け渡してしまう喜び。

 

今の自分をなくしてしまいたいという欲求の一方で、その愛のためには、自分自身を維持しなければならないという義務感

 

もうどこを切り取ってもおしゃれ。ビジネス書を読み漁るのに疲れていたので、こんなステキな本で癒されてちょうど良いタイミングでした。

 

 

また、小説の中で、洋子はイラク戦争真っ只中のバグダッドを訪れ取材しています。パリへ亡命してきたイラク人女性も登場し、戦争がどれだけ個人を苦しめているのかがわかります。恋愛小説ですが、登場人物の仕事を通して、リアルな世界のことも少し見えてきます。

 

 

おしまい

 

マチネの終わりに (文春文庫)

マチネの終わりに (文春文庫)