みたら書く

本や映画の感想を書きます

映画『スキャンダル Bombshell』-フィクションじゃない。

女性蔑視を扱う点で良い映画。

考えるところが多過ぎて、感想は支離滅裂になってしまいました。

 

○内容

 

事実に着想を得たフィクションです。元ネタはこれ。

 

フィクションということになっていますが、実際はほぼノンフィクションです。

 

テレビ局FOXニュースのCEO・ロジャー(ジョン・リスゴー)は、キャスターに抜擢の可能性を匂わせながら、性的な行為を強要することを繰り返していました。拒もうとすると契約更新しないことを匂わせたり、人気のない番組に降格させたりするため、キャスター達は簡単に拒否できません。

かつてロジャーを拒否し降格されていたグレッチェン(ニコール・キッドマン)は、自身の番組内でロジャーの意図に反するチャレンジをします。例えば世界ガールズデーだからノーメイクで番組に出る。女性を客体化するのをやめようという。(女性の客体化?↓)これに対しロジャーは「更年期で汗だくの、テカッた顔を見せるな。早くメイクしろ。」なんて言いながらドーナツを貪る。…

ロジャーに反抗した結果、グレッチェンは解雇され、そののちにロジャー個人を、『性的な行為を強要し、それを拒絶された結果として自身を解雇した』と訴えます。

 

一方、野心的な若手のケイラ(マーゴット・ロビー)はロジャーの要求を受け入れ、人気番組に出ることができるようになっていました。しかしグレッチェンの訴えが報道された後、自身の選択は正しかったのか葛藤します。

 

そして人気キャスター・メーガン(シャーリーズ・セロン)。FOX社内はグレッチェンの訴えを受け、内部調査を始めます。メーガンは当初沈黙し、かつて自分にもロジャーの誘いがあったことを隠しますが、ついにはそのことを告白します。更には同じ経験をしたものがいないか社内を調べ、当時ロジャーと関係のあったケイラにも接触します。

 

FOX内外からロジャーに関して多くの証言が寄せられ、訴訟を起こしたグレッチェンは勝訴。ロジャーはFOXを解雇されます。

 

 

…映画を見るとき、登場人物の役名も、俳優も覚えられないので困ってます。邦画でもそうですが、洋画では特に。すごく有名な人でも全然わかんないし、最近特殊メイクがすごくて、もう無理…。閑話休題

 

 

○感想

 

こういう話が、映画の題材にされるのは良いことですね。多くの人が問題意識を持つきっかけになります。ただなんとなく違和感があったのが、この映画が「衝撃のセクハラスキャンダルを描く」と宣伝されていたこと。セクハラ…?

性的な関係を強要することだけがセクハラと思われる、誤解を招くのではないかと不安になってしまいました。

 

作中ロジャーは、過去仕事関係の女性複数名と性的な関係を持ったことについて、『(彼女達が自分と関係を持ちたがっているかどうかは)目を見ればわかる。あの頃は皆そんな目だった。今は太っているが昔は…(そこそこ俺もイケてたんだよ)。』という発言。本当にやめてほしい!本気で言ってるとしたら怖すぎる!こんな誤解をしている男性多いのかな。作中の流れとして、関係を持った女性達は権力を振りかざされて従ったのみのようです。

 

セクハラ含め多くの性被害に悩む人に問いたいのは、私たちは"思わせぶり"なのしょうか。作中メーガンがロジャーに誘われたという過去を告白したことに対して「それは君がセクシーだからだよ。」という男性がいました。その発言の意図がわからないのですが、もしかしてあなたはセクシーなんだよって褒めてるつもりなのか?勘違いされるようなことをしているあなたが悪いと説教しているのか?もしかして、痴漢されるのも女性が油断してるからなの?満員電車で体を密着させざるを得ない時にも、誘っていたなんて言われてしまうのか?

本気でそんなことを思う人はいる。そして勘違いされて被害を受けることがある。私たちの身の回りには多くのトラップがあるんですね。

 

男女差別やセクハラ問題について考える時、いつも悩むのは、私自身は女性であることで良い思いをしたこともあるのではないかということ。優遇された過去がありながら、堂々と批判できるのかということ。

振り返ってみれば、かつて優遇されたのって、人生がかかったような時ではありませんでした。例えば席を譲ってもらう、映画館のレディースデー、飲み会で偉いおじさんの近くに座れて、直接話ができる。…そんなことにどれ程の価値あるのでしょうか。例えば男性のように、入試で点差をつけられるような、人生における決定的な事柄で優遇されたという自覚はありません。(入試で点差?↓)

 

入試で下駄をはかされたわけでもない、就職試験で女性だから採用されたわけでもない(私の勤務先に採用されている女性達の出身大学は、男性に劣らないレベルであり、優遇されているとは考えられません。)。やはり優遇されてきたとは到底思えない。

ただ、自分にはまだ関係ないものの、産休育休をもらうときには、"優遇"されてしまったと悩むかもしれません。もしかして今だって、女性は地方に飛ばさないようにしようという配慮をされているのかもしれない。そんな事実があったら、私は女性が不遇なところにだけフォーカスして、批判していいのでしょうか。

 

ここまで自身の葛藤を書いてきましたが、このような考えを発信することは男性にはウケないでしょう。年代が上の人にもウケないと思う。多くの人が異性として魅力的なのは力のある男であり、従順な女(賢く見えるが自分よりは劣るとか、少なくとも自分より優位に立たないもの)と考えているのではないか、なんて考えるのは極論でしょうか。ウケない、ということは、聞く耳を持ってもらえないということです。(話を聞いてもらうために、従順な女を演じる必要もありませんが。)

自分に都合の悪い時だけ、自分が得しそうな時だけ、優遇されるよう振る舞った自覚はないのかと聞かれると、正直答えられない。しかも私が男女差別に違和感を感じるのは、自分に直接的な被害があったときだけ。こんなご都合主義な私には、批判的になる資格はないのではないか。

 

こんなふうに、いつも理想と現実をループして考え込んでしまいます。自分が悪いのか?優遇されてきたのではないか?男性だってつらいことがあるのでは?そもそも私にこんな大きな難しい話題を語る資格があるのか?…等と、女性ばかりがこのような不毛な悩みを抱えなければいけないことこそ、セクハラの一番の問題点だと思っています。

 

 

おしまい

 

 

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