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本や映画の感想を書きます

男に生まれたかった-本『働く女子の運命』

私は高校生の頃、男に生まれたかったとよく言っていました。

当時私は地元の進学校に通っていて、このまま良い大学に進めばそこそこ稼げるようになれると思っていたのです。ただ、私は稼げるようになったあと、結婚して子供を生むときにキャリアを途絶えさせなければいけないとも思っていました。

そうなったら復職も難しいものなのかもしれない。けれど絶対に「男に食わせてもらう」にはなりたくない。

こう思っていたのには母の影響が強くあります。

 

今でもその考えは変わらないまま。

そして、あの頃から10年経って、働き出した私から見える社会はあまり変わりません。会社の先輩から悪意なく「あなたは(女だから)結婚したら辞められるね」「女性ならではの視点で気づくことがある?」と言われたり、男性社員が「子供が夜泣きしても起きちゃダメだよ、ママじゃないとって言って押し切らなきゃ」なんて会話しているのを耳にしたり、育休は子育てのためではなく、節税のために取得する人がいるという現状を知ったり。奥さんが不妊治療してるんだよね、っていう既婚男性が合コンに紛れ込んでいたこともありました。

 

ガッカリすることばかりで、やっぱり男に生まれたかったと思ってしまう。でも嘆いても仕方がないし、私が女だということは変わりません。現状の方を変えなければいけない、それにはまず現状を把握することも必要では、と思いこの本『働く女子の運命』を読みました。

 

★男性みんながそうじゃない!とか、現状を変える必要はないと思っている女性もいる!とか分かっています。私の個人的な話、半径5mの話です。

★男だ女だというのは性的な役割という文脈で読んでください。LGBTQ+を無視しているわけではないです。

 

○関連記事はこちら

 

子供を産んで後悔した話や、夫婦別姓の議論、ジェンダー問題に取り組む負担について書いています。

もし世の中がジェンダーバイアスのない場所だったなら、それだけの時間を私は自分が好きなことの追求や、もっと多くの作品を生み出すことに注げたのに。 

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男性目線の女性学とか、政治家は男女共同参画をどう考えているのか?とか、海外の女性はどうなの?とかとか。パラパラと書いています。

 

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こちらは私が新卒採用をしていたときの話。わかりやすくていい本だった。

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小説とか映画も。

 

さて、本題の『働く女子の運命』の感想を。

 

◯著者

濱口桂一郎

1958年、大阪府生まれ。東京大学法学部卒業。労働省欧州連合日本政府代表部一等書記官、衆議院調査局構成労働調査室次席調査員、東京大学客員教授政策研究大学院大学教授を経て、現在、労働政策研究・研修機構の主席統括研究員。日本型雇用システムの問題点を中心に、労働問題について幅広く論じている。著書に『新しい労働社会ー雇用システムの再構築へ』(岩波新書)、『若者と労働ー「入社」の仕組から解きほぐす』(中公新書ラクレ)、『日本の雇用と中高年』(ちくま新書)ほか多数。

(本書巻末より引用)

 

 

◯感想

 

大きく2つ、土台となる考え方について整理できました。

 

年功序列賃金は以下の考えから成り立つ。

・若者に高給は必要ない。

・年齢が上がるにつれて、妻子を養うために必要な賃金が増える。

・養われる側である女に高給は必要ない。

 

②日本ではメンバーシップ型雇用であり、その特徴は以下。

・職種と職能が混同されている。

・仕事に対する成果よりも、長く勤めること・長時間働くことの価値の方が高い。

 ・女性はやめる可能性が高いこと・無制限に働けないことからメンバーとしての評価が低い。

  

また、給与の格差について、非正規雇用男性が増えてから、問題視され始めたというところに悔しさを感じます。

 

 

◯内容メモ

 

・雇用形態の変遷

 

戦後女子労働問題の争点となる結婚退職制、女子若年定年制は、1930年代に銀行や大企業を中心に導入されています。

退職積立金及び退職手当法(1936年)は退職手当の支給を義務化しましたが、その際、「女子労働者が結婚する時」に関して、労働者が退職を申し出た場合であっても自己都合退職とはしないこととされました。

当時経営者側が「退職奨励になる」と反対しているのに対し、全日本労働総同盟婦人部を始めとする女性側は「家族制度の維持」を理由に賛成しています。女性の主たるメンバーシップは家庭にあると言う意識は女性の間でも強いものがあったことがわかります。

 

しかし世界大戦が始まり、成人男性が兵士として戦場へ送り込まれるようになり、それを補うために女性の社会進出が国策として推進されるようになりました。その頃反対意見もあり、家族制度を破壊すると消極的だったとあります。しかしこの時期の就業経験が戦後の女性の意識に何らかの影響を起こしていると思われます。実際、女性若年制の維持していられなくなり、1944年には住友銀行が女性事務員の定年を30歳から男子と同じ55歳にしてあげています。

 

 なんというか、女性は家庭にいるものであり、その家庭の長は男性である。女性は各家庭のものであるから、職場に借り出してはいけない。という所有物のような印象を受けました。

 

悲しいなと思った文章。

 

私は・・・離婚した。その原因は、夫が私のアメリカ留学に反対し、会社を辞めるように主張したからであった。留学の理由希望については、結婚前から十分話してあった。夫は進んで協力すると言っており・・・充分理解してくれ、むしろ私を励ましてくれていた。しかし、実際の問題にぶち当たった時、封建的な考え方でしか行動できない相手を発見して、私は大いに悩んだ。 

 

 

関連

 

 

 

・年功賃金制度の源流

 

20世紀初頭の日本では現在のような賃金制度は存在していませんでした。しかし日露戦争第一次世界大戦後、大企業に長期勤続を前提に年功序列制が導入されました。これは長期勤続を奨励するものでした。

 

・皇国勤労観とは

 

さらに皇国勤労観の賃金思想として、昭和19年中川一郎氏は「勤労は国家への奉仕であるから、賃金と言う対価と交換されるべきものではなく、国家がその生活を保障すべきものである」という国家社会主義イデオロギーを前面に展開しています。これは戦後脈々と続いていく思想の定式化となっています。「勤労者個人にあらずしてその扶養家族をも含んだ家を対象とするものでなければならない。」というのも、なんというか、まさに家単位で考える社会主義

 

家父長制を支える思想というか・・・家単位で考えるから、「嫁ぐ」なんていうなんていう発想になる。家の長、家主は偉いとなる。家族の分までと与えられる賃金を、自分自身の力と勘違いさせる。私は、使う言葉によって考え方が決まると思っていて、「お嫁に行く」なんて言葉が嫌いです。この嫌悪感の理由が少し分かった気がします。

 

こうした生活給思想に基づく賃金制度は、終戦直後GQから批判を受けています。その報告の中に、日本の慣習的賃金構成の一番悪い面は、「仕事の能率が同一である場合においてさえ、女子に対して男子よりも低い賃金を支給する」と言う一般的慣例で慣行である、とあります。

 

 

・現代

 

雇用とジョブと賃金が無関係。かろうじて総合職と言う男性コースに入れてもらった少数派の女性たちは、専業主婦やせいぜいパート主婦が銃後で家庭を守ってくれている男性たちと同じ土俵で、仕事も時間も空間も無制限と言うルールの下で競争しなければなりません。結婚でもしようものなら、自分が前線も銃後の役割もなさなければならないので、大変な負担です。

 

関連

 

 

 

 

 

◯やること

 

女性管理職や役員比率の多い会社って、どういう業界に多いのか調べてみます。別にしごと嫌じゃないのにな、価値観が違う人が少ない会社なんてあるのかなーなんて思いながら。 

 

 おしまい。

 

 

https://www.amazon.co.jp/働く女子の運命-文春新書-濱口-桂一郎/dp/4166610627

 

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