お笑いを分析している本です。どの業界にも評論家はいるんだなあと感心しました。わかりやすいし、著者の塙さんがM-1の審査員やるのも納得です。
ちなみに私はM-1グランプリを毎年見ているわけではありませんが、この本は十分楽しめました。見ている人はなおさらと思う。
○内容
<M-1対策>
◎評価されるもの
・新しい
・誰がやってもできる
ネタ自体が面白ければいいという考え。個人に頼るもの=キャラクターが強いネタで、いいネタとは言えない。
・個人が見える
「誰がやってもできる」と相反するが、ネタをやってる本人の性格を潰すようなのはだめ。例えばサンドウィッチマンやチュートリアルは、このネタをやってること人達は、こんな人間性なんだろうな…と想像できるのが良さである。かつ、本人達にやらされてる感がなくのびのびとしている方が良い。
・4分のステージのうち、最初の30秒で受ける
最後にかけて一気に盛り上がり回収するネタには、4分の制約は不利。
・強い!
4分の舞台で、インパクトのある分かりやすいツッコミは強い。ナイツの静かな漫才に対して、霜降り明星のツッコミは『強い』。
◎評価されにくいもの
・キャラが強い
・小ネタ
ライブハウスならお客さんいじったり、内輪ネタで喜ばれるけど。
・うまさ
これは変わりつつある。若手で新しいものを見せれば、荒削りでも評価されていたが、今は結成15年までと間口が広いため、うまさも無視されない傾向(第十回までは結成10年までだった)。
◎
M-1は吉本のもの、つまり関西芸人のために開催されている。関東芸人に対して門が開かれているだけであり、ルールは当然関西風。
おもしろかったのは、お笑いにもファームがあること。フォームを発明できれば売れる。例えば、
・ヤホー漫才(ナイツ)
・ノリボケ漫才(ハライチ)
・ズレ漫才(オードリー)
このフォームを見つけた時、若林は「売れちゃう」と思ったそう。
・妄想漫才(チュートリアル)
・ツッコミが笑いを笑いを取る(南海キャンディーズ)
山ちゃんが初めてなんだそう、ボケが華、ではない漫才は。
・笑い飯…笑い飯はダブルボケではなくて、笑い飯ってジャンルだね、って書いてました。
ただ、インパクトのあるフォームもM-1では不利。たとえばオードリーは準優勝した翌年以降は出場はしなかった。新しいものを求めるM-1では評価されないから。
○感想
どの世界も真剣に取り組むと奥深いものです。なんとなく見ていたお笑い芸人さんも、漫才を深掘りする、その姿勢は真剣そのもの。なのに語り口がなんとも面白いというのは、芸人さんならではの才能なのか、習性なのか。
やっぱりお笑い芸人が書いているのだから、さすが面白い本になっています。さくっと読めるのでお笑い好きな人は是非本を読んで欲しいです。
おしまい