みたら書く

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伊藤忠の石油開発参入−『不毛地帯(四)』

今回は石油も出てきました。どんどん規模が大きくなってきて楽しい。

 

1960年代、イランでの利権を巡る戦い。

現地での第一位は五菱商事(モデルは三菱商事)、第二位は近畿商事(伊藤忠商事)だったが、第一位と言えども五菱商事の立場も厳しかった。

 

○著者

一巻で書いたので割愛。

 

 

○内容

 

伊藤忠商事が進めてきた、いすゞ自動車とフォードの提携話が立ち消えになる。フォードはマツダと組むことになり、その裏には三菱商事の存在があった。 

 

・副社長の里井が狭心症を発症してしまい、その発作は世界を飛び回る商社マンにとって不利なものだった。社内で第2位であった里井のポジションが揺らぎ、それに対して壹岐正(モデルは元伊藤忠会長・瀬島雄三)の力が増していく。

 

・壹岐の中で、陶芸家の秋津千里の存在感が増していく。日本に帰ってきた壹岐はマンションで一人暮らしを始め、秋津千里は度々その部屋を訪ねるが、壹岐の娘と鉢合わせてしまい、元妻を亡くして5年ほど経っているものの、それぞれの心境は複雑だった。

  

※近畿商事(モデルは伊藤忠)がイランの石油開発に参与した話が出てきたが、それはフィクションだそう。(実際は東南アジアへ進出している。)

・イラン南西部サルベスタン鉱区の国際入札が行われる。

日本石油開発公社や、五井(三井商事)・五菱(三菱商事)」と組むこととなったが、近畿商事(伊藤忠商事)の取り分が少ない取り決めとなってしまう。その背景には各社と政治家・大臣とのつながりの深さがある。

石油メジャーではなくインディペンデントと組むことで、近畿商事は自社を有利に進めようと策略を立てる。

 

 

 

○感想

 石油を掘るのってとんでもない金額なんですね(数十億が軽く飛ぶ)。その分当たれば夢がある、小さい会社が逆転するのチャンスと書いてありました。

 

壹岐正の立場がどんどん強くなって面白いのだけれど、その分過去のソ連抑留があらぬ疑いをかけられたり、不穏な動きも出てきます。

第二位の里井副社長が、心臓病のために権力が弱まるのも、所詮企業人は駒なんだなあと感じて切ない。副社長になっても、どれだけ会社のために尽くしてきていても、もうこいつは使えない・・・って部下からも社長からも思われてしまうのね。里井さんにはお世話になったけれど、これからは壹岐さんの時代だ、なんて考えて、乗り換える部下の狡猾さよ・・・。社内政治もこの小説の見どころの一つです。

 

○やること

 

最終巻走り切ります!

 

 

おしまい。

 

 

 

 

 

不毛地帯(四) (新潮文庫)

不毛地帯(四) (新潮文庫)

  • 作者:山崎 豊子
  • 発売日: 2009/03/17
  • メディア: 文庫