みたら書く

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『環境経営・会計』-CO2排出規制にどう対応していくか?

 

 

年末年始の課題図書。1月も終わりになってようやく読み終わりました。大学の参考図書になるような本だったので、さすがに難しかったです。

 

最近またCO2排出規制がニュースで話題になっていましたね。何十年も前から環境問題はありましたが、やっぱり実感がなかったり、自分たちの世代には関係ないやと思ったり、(政治家は高齢だし)なかなか取り組みの進まない分野なのかなあと思ってました。お金出してまでやりたくないし。まあだからこそ政策として、補助金出したりCO2排出規制、先日の投稿(トヨタのやつ)のようにEV車の推進をしているのかなあ。

 

 

○著者

國部克彦

神戸大学大学院経営学研究科教授博士

 

伊坪徳宏

東京都市大学環境学部環境マネジメント学科教授博士

 

水口剛

高崎経済大学経済学部教授博士

 

○内容

 

・1〜5章まとめ

※全体的な考え方や、後半の章で使う言葉の解説をしている部分。

 

環境問題を考えるときに、企業が製品を作る段階での外部への影響(例えば石炭を燃やしてCO2を排出するとか)だけを考えるのは本質的ではない。その製品の原料が採掘されるところから消費者に使われ、廃棄処分されるまでの一連の流れ全ての影響、つまりライフサイクルコストを考える必要がある。

現状では消費者が排出する環境負荷影響に対しては、社会全体で負担している(=社会的コストという)。

企業か消費者か株主か、誰かが損をする構造になっているが、企業と市場双方からグリーン化の努力をする必要がある。

 

マテリアルフローコスト会計という考え方。

ガイドラインは色々あるけれど、製品とそれ以外にかかるマテリアルコスト、公害防止、イメージ、廃棄物、研究にもコストと環境負荷がかかっている。

・機能と価値の違い、コストで割る

 

伝統的な設備投資決定の方法は、キャッシュインフローとアウトフローの比較、現在価値法や回収期間法等があるけれど、環境配慮型は、財務会計以外に環境負荷の評価指標も盛り込んで考えるべき。環境配慮型原価企画とかいろいろある。

マテリアルフローコスト会計の情報を、設備更新の際代替案評価に活用することもできる。

一時的なもの(特殊原価調査)もあるしシステム連携させるものもあるが、LCA(ライフサイクルアセスメント)との統合により、上流下流に渡って見直せるようになる。

 

6.LCC(ライフサイクルコスト)

商品の生産のみならず、原料の採掘から、消費者が使用する際の電力、それをリサイクルする際どれだけ有価回収できるか(回収した分エネルギーコストを削減できたと言える)といった、製品に関わる全てをコストで評価する方法。

 

7.環境効率とファクタ

環境効率とは、製品の付加価値や経常利益を分子とし、それにかかる環境影響(これはLICA手法等を用いて算出)を分母とする指標である。国レベルではGDP/年間被害相当額として考えたり、企業レベル・製品レベルでも同様に算出できる。

しかしこの指標は分母分子を自由に設定できるため、他社と比較するのが容易ではない。

 

ファクタとは、評価対象と比較対象製品の環境効率の比をとった指標である。基準の何倍か?と考えわかりやすい。

 

8.環境情報開示と環境報告書

環境情報の開示は、義務化され、開示項目を明示されている。(紛争鉱物の取引情報も。)日本はあまり詳細にまとめていない。各国、各社の算出基準も明確化されていないが、情報審査協会や非営利団体の定める枠組みが、統一され適用されるべき。

 

9.外部環境会計

財務会計の枠外、環境報告書で開示する環境会計のこと。環境庁が1999年以降、ガイドラインを示し各社標準化している。

 

10.資産除却債務

キャップ&トレードにおける排出枠は単なる売却可能な資産ではなく、許容される排出の上限値であり、実際の排出量をその範囲に抑えなければならないと言う義務とセットになった資産である。そのような義務の遂行状況が投資家やその他のステークホルダーにはよく理解されるような会計であることが望ましい。

なるほどね。

 

11.資本市場と環境問題

 

初期の際、英米キリスト教会が投資先から酒やタバコを除外したのは、それらが彼らの宗教的倫理観に反するからであった。酒を飲むことが罪ならば、そこから利益を得ることも罪だと言うのである。彼らが示したのは自己の価値観や倫理観を通し行動でも一環させると言う姿勢があり、「儲かりさえすれば何をしてもいいのか」を問うものであった。これが第一世代のSRIである。
 

 

第二世代では1970年代以降のアメリカ、様々な社会運動と結びつくことで社会変革を目指すものとなった。利益を犠牲にするものではなく、社会的スクリーンや株主行動で社会変革を目指しながらも、通常の投資と同等の利益を追求するものである。そして1990年代、第3世代のSRI企業が環境問題に配慮することは利益を犠牲にすることではなく、資源効率を上げ、無駄を省き、訴訟等のリスクは減らし、企業イメージを高めて利益に貢献することだとする認識が広まった。現在ではこの考え方を社会問題全般に拡張し、CSRに取り組む事はリスクマネジメントと企業イメージの観点から企業価値の向上に向上に貢献すると視聴されることが多い。
 
 

○感想

公害防止とか、エネルギー管理とか、工学的な視点では考えてきたことだけど、経営という視点では考えたことなかった。

 

最近三菱重工の欧州での水素製鉄のニュースがありましたが、日本で導入されないということは、日本は遅れているのかなあと感じます。国としての力の入れ方も、欧州が昔から牽引しているイメージがある。(水素製鉄、日本でやってるかも)

でもキリンの廃プラ再利用とか、気にしてニュースを見ると少しずつ取り組んでいる会社は増えているのだろうか。

 

本書のコラムで、キヤノン等も環境報告書の中でマテリアルフローコスト会計を使っているとありました。やっぱり本読むだけじゃなくて実物を見ないとね、ということで読んでみる。

https://global.canon/ja/csr/report/pdf/canon-sus-2020-j.pdf

global.canon

一括ダウンロードして、P.38以降参照。見やすくてわかりやすい。

マテリアリティマトリックスがわかりやすいです。これから仕事する相手の、サステナビリティレポートは読むようにしよう。・・・と思って調べ始めたのですが、見つからない。どの会社もやってるわけではないんですね。やっぱり余裕のある大企業がやっている取り組みというのが現状です。それでも強制力を持たせたり、補助金出したり、いろんな工夫をして進めていくべきで・・・

 

ただ、環境と経済はやっぱり両立しないのかと感じる記事も。

 

この本は何かの解決策を提示しているわけではなく、こういう考え方でまとめると比較しやすいですよ、とか、投資や評価の判断材料を与えてくれるものでした。タイトルに経営・会計ってついているから当たり前なんですが、現場の担当者として働いている自分からすれば、結局じゃあどうするの?がわからなかった。それは個別企業で考えていくべしということなのかな。サラリーマンとしての感想はそんな感じ。

 

ただ、投資する個人としては、自分のスタンスを固める要素に「環境」を入れるのはいいなと思いました。キリスト教徒が酒で儲ける会社に投資しなかったように、私も自分の思想と合わない会社には投資しないようにしよう。金額の大小ではなく、これはポリシーの問題ですね。

 

 

○やること

 

去年の2月に落ちた簿記、再チャレンジしよう。一瞬でも勉強していたことが、この本を読み進める上で役立ちましたし、何よりもすごいと思っている上司が、さらっと簿記一級持ってるよと言っていたのを聞いて、モチベーションが上がってるので。

①仕事に直接役立つこと(工学的な知識とか)、②間接的に役立つこと(簿記とか)、③今は役立つかもわからないけど自分が学びたいこと(歴史とか)、それぞれに時間を割いていきたいけど、だらだらしすぎて時間が足りない。

プライベートでこの半年いろいろあったけど、気を引き締め直そうと思いました。

 

年間計画・・・・ ①を20冊、②を20冊、③を10冊、④として小説や、株式投資とかフェミニズム、老後のことを勉強したりする本を読もうかな。これはカウントせず。週に一冊なら、たぶんいける。

実務的な本ばかり読んでも良いのですが、小説を読んでワクワクしたり、優しいエッセイを読んで泣くことも人生には必要と思ったらします。

 

ちなみに去年の振り返りをしてみると、ブログ50投稿してました。自粛で時間めっちゃあったもんね・・・。

本は何冊読んだかわかりませんが、まあ割と年の前半にたくさん読んだ気がする。新しく取り組んだことは、たくさん。

 

2月に初めてヨーロッパに行った。コロナ前滑り込みで行けてよかった。あと簿記初受験して落ちたり。

4月からは新しい仕事をやらせてもらえた。これはとても良い経験になったな。

7月からもまた別の新しい仕事。まだ半年足らずだけど、わかってきたことがあるので今年も引き続き頑張りたいな。(そのために部署異動はしたくない。)

10月から結婚と引越しとバタバタ。感謝することばかりなのに、それをちゃんと伝えられていない気がする。よくないね。

 

2021年、今年も新しいことたくさんやっていこう。

 

おしまい。