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本『スマートシティ・ビジネス入門』-スーパーシティとの違い

 

2012年の本で、いまさら入門なんてどうかと思いつつ読みました。

ちょうどいまスーパーシティも話題になってるし、読み終われてよかった。

 

○著者

望月洋介

 日経BP社日経BPクリーンテック研究所長、Smart City Week委員長。2012年1月より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)  

望月洋介|プロフィール|HMV&BOOKS online

 

○内容

 

1.背景

 

都市部の爆発的な人口増加。1950〜2050年の100年間で、世界人口は20億人から90億人になり、都市人口比率は急上昇している。

特に日本では高度経済成長の時代に都市化が進んだため、インフラの老朽化も課題になってきている。

 

 

2.各国のプロジェクト

 

スマートシティには明確な定義はない。関連する業界も多岐に渡る。

キーワード:

スマートグリッド(電力IT)

再生可能エネルギー

・次世代自動車(カーシェアリング含む)

 

国ごとに目的が異なる。インフラを整えた上に新たなビジネスを目論むアメリカ、環境負荷低減を目的とするヨーロッパ、住むところを作るための中国…等。

2012年地点で4000兆円の市場のポテンシャルがあると考えられていて、各国が力を入れて活動していたのも納得です。(世界スマートシティ総覧2012)

 

アメリ

電力事業者に加えて、IBMciscointel等IT企業がプロジェクトの主体。スマートメーターを普及させ、新たな産業を興す。

 

・ヨーロッパ

企業よりも都市が先導する。

広域プロジェクトの代表は、デザーテック(サハラ砂漠にて太陽光発電風力発電、送電して欧州の使用電力を補う)。

 

・中東、北アフリカ

原油は資源として出荷するため国内ではあまり使用できず、エネルギー不足が深刻化。

マスダール・シティ」を契機にプロジェクトが広がる。

 

シンガポール

国家戦略として都市開発ソリューションを海外へ輸出する目論み。

一例として、水ビジネスでは、研究機関を集めたり、国際会議(SIWW)を開催しビジネスを生んだりしていて、つぎにエネルギーやスマートシティに焦点を当てている。

 

・その他

インド、インドネシア、韓国、ブラジルに関しても記載ありましたが省略。

 

・日本

実証実験の取り組みが2010年スタート。横浜市北九州市豊田市関西文化学術研究都市にて。

 

***

 

私の地元北九州は公害を乗り越えた町として知られますが、そこで「北九州スマートコミュニティ創造事業」というのが行われていたそう。知らなかった。日本製鉄が持っていた電力線を使って、電力料金を変更。

 

https://www.smart-japan.org/english/vcms_cf/files/Kitakyushu_Project_Japanese.pdf

 

***

 

環境=温暖化対策というだけでなく、雇用創出や高齢化対策等、日本の将来に向けた課題対策を行っている。ただし個別の都市で取り組んでおり、その連動性は薄い。

 

 

 

3.実現に向けた課題

 

・モノ売りではなくビジョン・ライフスタイル提案を 

行政主体ではなく民間主体となるために、事業化を進める必要がある。しかし日本の企業が海外に提案するのは各技術(例えば監視機器そのもののクオリティの高さをアピールする)に偏り、ビジョンを掲げることができていない。

 

・情報戦

日本の情報力の弱さを、筆者は懸念しています。

情報を集める力と発信する力。提案力の不足。専門家は日本の技術を認めているが、スマートシティ構想に関わる政府や自治体、市民には認識されていない。企業も良い製品を作れば売れるという考え方を捨てきれていない。例えば電子部品産業の紹介を日本語と英語のみで行っており、中国語がないとか。

また、日本企業が海外展開するときに「ヒト」「モノ」「カネ」は送り込むけれども、「情報」が足りていないと筆者は言います。これはこないだのコンサルの本に書いてあった通り、「企業のグローバル展開は①海外に拠点がある、②海外拠点と情報のやり取りがある、③海外拠点とノウハウのやり取りがある、④海外拠点と人のやり取りがある」

の順に進むのに、日本は2つめのフェーズでつまずいています。はやくフェーズを進めないといけない。

 

ただ、ISOで実質的に規格を決定する組織SC1の幹事国・議長を、日本が永久的に務めることになっているそうで、これは強い。

  情報の大切さ・トップに躍り出ることで世界標準化を主導できる、それによりその国の企業は有利になるといった話はトヨトミの野望でも語られていました。事実をもとにした小説なので、さすが現実に即していますね。

 

 

 スーパーシティはこちら。

スマートシティが要素技術先行であったり、結局街づくりそのものにアプローチできていなかったりしたのを、もっと住民まで含めた動きにしていこうという感じ。

 

www.kantei.go.jp

 

○感想

 

2012年当時各国がスマートシティに注目していたのがわかりました。

 

ちなみに福岡市での取り組みはこちらで書きました。

 

かなり古い本でしたが、基本的なことは理解できました。たくさんのプロジェクトの事例が載っていましたが、それらが現在どうなっているか調べることがなかなか難しい。(始まりは大々的に発表するものの、経過はあまり開示されない?)

 

もうちょっと近い時期に書かれた本を探してみます。

 

 

 

スマートシティ・ビジネス入門 4000兆円市場への挑戦

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