映画「それでも夜は明ける 12years a slaves』
2014年の映画。アカデミー賞では作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞しています。黒人奴隷がその当時どのような扱いを受けていたのかがわかる、ドキュメンタリーのような作品です。
○内容
1841年、ニューヨークでバイオリニストをしていたソロモン・ノーサップは、妻と二人の子供と幸せな生活を送っていました。しかしある日突然誘拐され、南部の農場へ売られます。そこから12年間、彼は奴隷として過ごしますが、遂にはその状況から逃げ出すことに成功します。
ノーサップと、彼と同じように奴隷として買われた少女を中心に、当時どのような残虐なことがあったのかが描かれています。
原作は1853年発表の、奴隷体験記『Twelve Years a Slave』。ソロモン・ノーサップが書いています。彼は奴隷制度廃止運動に取り組んでいますが、その死については一切の記録がないそうで、それがまた怖い。(暗殺?)
○感想
映画の中で、奴隷の少女が「私を殺して」って言うシーンがあります。そこが1番苦しかった。
映画『スキャンダル』を見ても思ったのですが、やはり映画は世界中に情報を発信する強いツールなんですよね。ニュースではなく2時間という、ある程度話題を深掘りできる時間にも意味があるし、映像は文章よりも情報量が多くなる。この映画でも衝撃的な映像が多く流れます。だからこそ訴求力がある。世の中に訴えるべきことを、映画が題材として扱ってくれるのは良いことですね。
人種差別の歴史ざっくりまとめ。
1700年後半
バージニア州、メリーランドのプランテーションのために、黒人奴隷が連れてこられる。売買される。
1776年
アメリカ独立。
北部では自由黒人という肩書があった。(この映画を見て初めて知った。)仕事のためにアメリカに渡ってきたり、主人から解放されたり、白人との間に生まれた子のこと。
奴隷制反対派のリンカーンが大統領になる。この頃奴隷は400万人いた。
1861-1865年
南北戦争。アメリカ憲法で奴隷制度が認められていたが、1865年に廃止される。
1896年
ジム・クロウ制度(-1954年。人種隔離政策)
1954年
ブラウン判決。この前後はいっぱい事件がある。アイゼンハワー大統領の頃(任期:1953-1961年)。
1960年代
公民権運動。キング牧師とか。1964年公民権法制定。ケネディ大統領の頃(任期:1961-1963年)。
2009年
オバマ大統領。非白人系として初めての大統領。(任期:2009-2017年)。
大量生産の時代に、労働力として安く使えた黒人奴隷。簡単に解放されなかったのには、経済的な理由があったんですね。
そして法制度上差別がなくなってきても、現実はまだ厳しそうです。進んだと思ったら、また逆行したりして。
この映画では1841〜1853年のことが描かれていました。
その後の時代、特に1930〜2010年頃のことを『大統領の執事の涙』が描いています。長い期間を描いていて内容濃いのにわかりやすかった。この映画の主人公の父親も奴隷でした。
映画の中の出来事がつい最近のことなのだと思うと衝撃です。
おしまい。