読み切りました!
めちゃ面白かった!
そして長かった、600ページ×5冊!
終戦〜1970年代までの長期に渡るストーリーで、登場人物も多く、さらに描写も密度高く書いてあって、読み応えがすごい。
世界を股にかけた主人公を中心とした小説でしたが、数十年の世界情勢や、高度経済成長期の日本の動きを、彼を通して見ることができました。
○著者
1巻の時に書きましたが再掲。
山崎豊子
1924(大正13)年、大阪市生れ。京都女子大国文科卒。毎日新聞社学芸部に勤務。当時、学芸部副部長であった井上靖のもとで記者としての訓練を受ける。勤務のかたわら小説を書き始め、‘57(昭和32)年『暖簾』を刊行。翌年、『花のれん』により直木賞を受賞。新聞社を退社して作家生活に入る。’63ねんより連載をはじめた『白い巨塔』は鋭い社会性で話題を呼んだ。『不毛地帯』『二つの祖国』『大地の子』の戦争3部作の後、大作『沈まぬ太陽』を発表。‘91(平成3)年、菊池寛賞受賞。(文庫本カバーより引用)
読み終わって知ったのですが、これ5年間連載していたらしい。書き続けるのがすごい・・・。
○内容
イランでの油田開発を、近畿商事が無事勝ち取ります!その功績もあり、主人公・壹岐正は社内で大きな権力を持ちます。社長の大門もその力を認め、副社長であった里井をタクボ工業社長というポストへ飛ばします。(その後里井はタクボ再建を成し遂げます。)そして壹岐正は副社長につきます。
しかし3年かけて掘り進めても一向に石油は出ませんでした。社内では各事業部が稼いだ金が油田開発に消えていくことに不満が溜まっており、社外でも融資している石油公社や銀行からもう手を引くよう圧力をかけられます。担当の兵藤が胃の3分の2を切り取るほどのストレスをかかえるほどの状況下、壹岐は首相・イラン国王まで巻き込んで、最後の挑戦を進めさせます。
並行して大門社長の指令により、綿花相場では48億円の損を出しており、壹岐は70を超えた社長の退任をどう進めるかを考えます。
その後無事イランでの最後の挑戦は成功、石油が見つかります。近畿商事、そして大門社長は世の中から称賛され、社内では壹岐の評価が益々高くなります。しかしこの絶頂を逃さず、壹岐は大門に会長ではなく相談役となるよう勧め、そのような進言をする覚悟を示すように自らも辞表を出し、近畿商事を退職します。
名言がいっぱいでした。
元副社長の里井が、近畿商事へ再び戻るよう打診された時の様子。忠誠心がすごい。(のちに気持ちは変わるのだけれど。)
社長が退陣された後までお仕えし、墓石の水のお世話まで致しますという意を響かせていた。
朔風会(元ソ連抑留者の会)会長・谷川元大佐の葬儀での、息子の言葉。
父は皆さんのおかげで死ぬまで自分のしたいことをさせて戴き、倖せ者でございました
元ソ連抑留者のために、会報を出したり会員の家族の面倒をみたりしていた谷川元大佐の活動を「自分のしたいこと」という謙虚さよ・・・。
綿花市場暴落の際、繊維部長の虚脱感。
・・・現業の長として、何から自主性を持って動かなかった空疎な思い・・・大門社長との間に任せてもらえるだけの信頼関係を得られず、破れ去ってしまった虚しさであった。
部長職にありながら、社長に命じられたまま無茶な相場に賭し、大きな損を出しているにも関わらずずっと止められなかった後悔がつらい。
大門社長の言葉。役員会の承認が得られないだろうという意見に対して、
役員いうたかて、所詮、一期二年の契約制に切り替わった高級サラリーマンや、平の時以上に身の保身を考え、自分の随いて行く先を敏感に嗅ぎ取るものや、・・・
こっわ。
※モデル企業・人のまとめ
・近畿商事→伊藤忠商事
・東京商事→日商岩井(双日)
・五井物産→三井物産
・五菱商事→三菱商事
・丸藤商事→丸紅商事
・千代田自動車→いすゞ自動車
・日新自動車→日産自動車
・アイチ自動車→トヨタ自動車
・富国自動車→富士重工業
・五菱商事自動車→三菱商事自動車
・東和自動車→マツダ(東洋工業)
・フォーク→フォード
・ユナイテッド・モーターズ→ゼネラルモーターズ
作中出てきた車。個性的。
作中東京商事(日商岩井)とフォーク(フォード)と東和自動車(東洋工業)の三社で合弁会社を作っているのですが、それが現在のジャトコ株式会社。
読んだ後調べていて知ったんですが、ジャトコ出身の役員が、私の勤め先にいる。ここも繋がるのか!と驚き楽しい。
・ラッキード社→ロッキード
・グラント社→マクドネル・ダグラス
自衛隊戦闘機を巡る政治献金の問題が起こっています。
もちろんそれをモデルにしている。
・第三銀行→第一銀行(みずほ銀行)
・日東交易→東日貿易
・タクボ工業→栗田工業
・中京紡績→林紡績
・国際資源開発→石油資源開発
・日本石油開発公社→日本石油公団
・壹岐正→瀬島龍三
・大門社長→越後正一
・里井副社長→貝石社長
・佐橋総理→佐八栄作
・田淵幹事長→田中角栄
・黄紅子→デヴィ夫人(まじめっちゃ良い女)
・秋津中将→草場辰巳(極東裁判前に自死?)
・谷川大佐→長谷川宇一
・朔風会→朔北会
参考:http://news2ch.com/1068.html
○感想
いやー読み切った。面白かった。
登場人物一人一人を深く濃く描写してあるので気持ちが入っちゃいますね。その分めちゃ人が死ぬのが辛かった。ただ、全巻振り返ると、死をきっかけに主人公・壹岐正は行動を起こしているように思えます。
シベリア抑留時代、弱り切った老人を強制労働させようとするソ連側将校に対し怒り、斧で斬りかかったのちに自ら身を投げて死んでいった若い堀少尉。彼の死をきっかけにストライキを起こします。
(参考:「奴隷のままでは死ねない」シベリア抑留後を闘い続けた男たち(栗原 俊雄) | 現代ビジネス | 講談社(2/3))
妻の佳子を事故で亡くした後に、アメリカ近畿商事へ出向。そこで独り身のまま大きな成果をあげる。
壹岐と酒を酌み交わしたその夜に、事故死とも自殺ともわからない強烈な最期を迎えた友人川俣防衛部長。そのとき扱っていたロッキード社の次期戦闘機を防衛庁への売り込むサポートをしてくれていたことが、彼を死に追いやった。
組織の冷徹さもすごいんですよね、副社長を社外に飛ばしておいて、また戻ってきて欲しいと言ったり。副社長のほうも、飛ばされた当時の恨みは忘れていないものの、自分の要求(壹岐正を社外に追放すること)を通そうと交渉したり。
社長命令で相場を張って、大暴落した責任をただ押し付けられノイローゼになったりというか気が狂った部長もいたし、石油の担当者はストレスで胃の2/3切除したり、人をただの駒としてしか見ていないような冷たさが、企業の発展には必要だったんでしょうか。
ついていく上位者をコロコロ変える寝返り役員もいるし(でも子を結婚させてやらねばとかいう言い訳がある)、偉くなると人を信用できなくなりそうですね。面従腹背という言葉があるのをはじめて知りました。
まじで最後までめっちゃかっこいい参謀・壹岐正のモデルは伊藤忠元会長の瀬島龍三さんでしたが、現実は結構違うみたいです。それはぼちぼち調べてきます。
○やること
この本を読むために、他の本を放置して山積みにしてしまっていました。
それを少しずつ読むのと、8月の試験に向けて勉強を本格的に始めます。
おしまい。