みたら書く

本や映画の感想を書きます

久々に純愛ものを!-映画『冷静と情熱のあいだ』

かなり前に原作を読んでいましたが、内容忘れてました。

 

大学生の頃、江國香織さんの本が好きだったんですよね。また読み返してみたいけど、引越しで捨てちゃったかなー。

 

 

○内容

 

イタリア・フィレンチェ。絵画の修復を学ぶ順正(竹野内豊)は学生時代付き合っていたアオイ(ケリー・チャン)が、ミラノのアクセサリーショップで働いていることを知る。付き合っている当時、アオイは妊娠し、順正に黙って堕胎していた。彼女が勝手に堕胎したことに怒り、傷付けてしまったことを彼は引きずっていた。しかも順正に内緒で彼の父親は、アオイにお金を渡していたことを、後から知ることになる。

 

そんな彼女を思い続けていた順正は、ミラノで彼女と再開する。しかし彼女は香港で知り合った実業家と付き合い、幸せに過ごしているように見えた。追い討ちをかけるように、順正が修復中の絵を、何者かに切り裂かれら事件が起こる。信頼を失った工房は休止に追い込まれ、遂に順正は日本に帰国する。

 

実はアオイも、順正のことを思い続けていた。実業家の彼のことも愛していたが、順正との過去は隠し続けていた。同じように、順正もその後付き合った恋人を大切に出来ずにいた。

 

アオイと順正の、それぞれの今の恋人は、寂しい思いをしている。本心を見せず、過去を隠す。相手を知りたいと思うのに、それを伝えてくれないのは当然寂しいのに、受け止めようとする優しい恋人たち。可哀想すぎる…。

 

学生の頃、二人は30歳の誕生日にフィレンツェの大聖堂で会おうという約束をしていました。その約束を果たした後、二人の関係は…

 

修復士は、失われた時間を取り戻すことのできる唯一の仕事だと思う

良いセリフ。

 

 

○感想

 

最高でしたね!こういうテンションで語ってはいけないジャンルの映画でしょうが、最高!!!

 

19歳で恋した時から、30歳まで思い続けられるのすごいよねえ。ずっと一緒にいようね、って学生時代言い合っていたことを、本当にずっと思い続けられるのすごい。大体こういうのは、会わない方が幸せだと思うし、過去は美化して閉じ込めておいた方が、悲しくならないで済むけど、映画でドラマチックに描いてあるとやっぱ憧れる。

 

自分を振り返ると、なんかそういうのなかったな…いやあったのかもしれないけど覚えてない…。

 

江國香織の、どの作品に書いてたかな、抱きしめて欲しい時に「腕に入れて」って言う台詞があるんです。大学生の頃、そのセリフを気に入ってました。懐かしい。

 

なんかこう、江國さんの作品には、自分に酔うようなセリフ、描写が多くて、その甘さに憧れていました。あと不倫の話がめちゃ多い。本命という居場所がある安心感を持ちながら、裏切りの背徳感を味わいながら、現実から離れられる恋は当然楽しいですよね…。江國さんはそれをすごくキレイに描くので、当時不倫を素敵なことのように思っていました。

 

まあ実際、現実とは無関係なところに、そんな人がいたらハマりますよねえ…息抜きの場というか、仕事とか、家族とか、生活とかと無縁の切り離された時間というか。

 

過去の恋愛の思い出も、それも同じ類のものなのかもなあとこの映画を見て思いました。現実と無関係の、息抜きになるもの。

 

映画は純愛もので美しかったけど、やっぱり寂しい思いをさせられた途中の恋人たちが可哀想すぎて、主人公だけに感情移入できなかったです。

いや、どんなに辛い思いをさせられても、好きな人を思い続けたっていう意味では、皆同じなんだろうか…難しい…。

 

おしまい。

 

冷静と情熱のあいだ

冷静と情熱のあいだ

  • 発売日: 2014/08/20
  • メディア: Prime Video
 

 

冷静と情熱のあいだ Rosso (角川文庫)

冷静と情熱のあいだ Rosso (角川文庫)

  • 作者:江國 香織
  • 発売日: 2001/09/20
  • メディア: 文庫
 

 

冷静と情熱のあいだ Blu (角川文庫)

冷静と情熱のあいだ Blu (角川文庫)

  • 作者:辻 仁成
  • 発売日: 2001/09/21
  • メディア: 文庫
 

 



 

新卒採用を経験して思うこと。役割を自分の能力と勘違いしてしまったこと。-本『採用学』

最近ZOOMで朝活をしていて、そこで紹介してもらった本。新卒採用の仕事をしていたので読みました。つまらなくなって、半分で読むのをやめちゃいました。

 

下書きに寝かせていたので公開。

 

 

◯著者

 

服部泰宏

 

神戸大学大学院経営学研究科准教授。神奈川県生まれ。 国立大学法人滋賀大学専任講師、同准教授、国立大学法人横浜国立大学准教授を経て、 2018年4月より現職。 日本企業における組織と個人の関わりあいや、ビジネスパーソンの学びと知識の普及に 関する研究、人材の採用や評価、育成に関する研究に従事。 2010年に第26回組織学会高宮賞、 2014年に人材育成学会論文賞などを受賞。(引用:日本企業の採用革新はどこに向かうのか 〜採用学・神戸大学大学院 服部泰宏准教授とともに考える〜 | 人事のプロを支援する | HRプロ)

 

◯内容

 

1.採用活動とは?

均質化する居心地の良さ、緊張感と新しい空気

 

2.日本の採用と歴史、特徴、課題

問題点は、

①企業と求職者の相互期待が曖昧

②選抜時の能力評価基準が曖昧で不透明

③上記の2点より採用活動がヒートアップしコストが上がっている

④同様に学生もヒートアップ

 

3.実践へのヒント①求職者の意思決定

 

4.実践へのヒント②選抜の科学


マーケティング分野のモデルが紹介されていました。

情報の精緻化モデル。意思決定に際して、

1、情報を適切に処理する能力
2、情報を処理することへの動機
この両方が情報処理の精緻度を決定する。というもの。求職者やお客さんは企業の情報やその商品についての情報を熟読しないかもしれません。

5.日本の最新動向

 

6.採用力とは

 

 

○感想

 

なんか一般的なことばかりでした。他の本で知ったことや、業務を通して先輩からレクチャーされたことがほとんどで、退屈でした(この本が、今まで触れた情報の大元の情報なのかもしれないけれど)。

 

 

○仕事について

 

3ヶ月間やり切った感があります。

学生と話すのは楽しいし、しんどいし、刺激を受けることがあれば、呆れてしまうこともありました。自分が詐欺師のような気分になったこともあったけれど、お互い様だよなーなんて寂しくなったり。

 

いままでの仕事とは全く違う分野で、社外の人と本やセミナーで学び、面接で実践し、人事戦略について意見を持ち、それを反映した行動を起こせた、すべてにやり切った感があって満足しています。インプットしてアウトプットしてフィードバックもらって修正してまたアウトプット、並行してまたインプット…とぐるぐるサイクルをまわす経験ができたのが良かった。

 

新卒採用について理解できたことに加えて、プレゼンの勉強をするきっかけを持てたことも一つ充実した理由ですね。この3年間、ほぼなかったので。

 

3ヶ月という期間は、自主的に学び、試し、ブラッシュアップしているのに十分な期間だったし、仕事というアウトプットの場があるとよりインプットの理解が進むと思いました。

 

 

○やること

 

社外の人に、自分の会社について語れるようもうちょい勉強しようと思います。株主用資料をちゃんと読み込んでみようかな。

 

おしまい。

 

 

採用学 (新潮選書)

採用学 (新潮選書)

 

 

 

 

将来を考える

 

就活生と話した時、自分の口から出ていた台詞。

 

「選択肢をずっと広げてても意味がないよ。」

 

「納得するまで自分で考えて、自分で決めるしかないからね。」

 

「五年後十年後、どうなってたいかを考えてみて。」

 

「あとは腹をくくるだけじゃない?」

 

よくもまぁ、偉そうなことを語れたもんだと恥ずかしくなります。これらの言葉は全部、自分に返ってきてる。かっこつけまくってた、本当に恥ずかしい。

 

私自身、自分はこの道で行く、って何かを選択してるわけでもなければ、納得するほど考え抜けてもいないし、五年後のことなんかなにもわからない。腹をくくるって、何に対して?という状況なんですよね。いやーもう、全然ダメ!

 

ただ、こうやって言い訳して、自己嫌悪して、逃げ回っていても仕方ないので、落ち着いて考えてみる。

 

サラリーマンとして、今の会社でなんとなく管理職になりたいというプランがあります。ただ。なんのために管理職になるのかがないので、そこにちゃんと向き合ってみる。終身雇用がなくなるとか、転職する可能性があるとかのプランBもあるけど、一旦横に置いておく。

 

35歳で課長資格の社内試験

40歳で課長 部下が15人

48歳で部長 部下が50人

55歳で役職定年

70歳で退職

85歳まで助っ人おばあちゃんをやる

 

助っ人おばあちゃんというのは、退職した後もふるい付き合いの人から相談を受けたり、地域の団体で活動したりというイメージ。とにかくどんな時でも社会と繋がっていることが大切と思うので。友人関係ではなくて、社会との関係が大事です。好きな人以外と関わることで世界が広がるはず。

 

戻ってじゃあ何系の職種がいいかなと考えてみる。まずフンワリ要件定義すると、

・大きいものを自分の手で作り上げた感じを得たい

・社外の人と関わりたい

・全体像を掴んで、方向性を決められるようになりたい

・ちゃんとお金儲けしてる感じが欲しい

 

かなりふわふわしとる。

 

この要件を意識しつつ、今の勤め先の職種の中で興味があるのは、設計、営業。興味がないのは技術、研究、製造、財務、知財。経営企画とかマーケティングとか、情報システム系の中にも、一部要件を満たすものがあるんだろうな。

新しい職種もあるよね。

 

設計、営業の中でも、計画して受注にこぎつけるまでが楽しいのかなーと思ったりする。あとはプロジェクトマネージャーいいなーと思うものの、実際はお金の管理ばっかりと聞いたりして、どうかなー。本当は社外ともっと関わりたいから、営業に近い方がいいのだろうけど、ほぼ建設業界な今の職場では厳しそう。いっそメーカー寄りの部署に異動するのもありか。

 

とにかくは、管理職になって、フンワリ要件4つを満たせるようになりたい。部長として社外と付き合いたい。

 

 

まとまらないけど、次にそこで必要なスキル・経験は何かを考える。10年後の目標のために、どんなスキルをつける必要があるか?これから10年でどんな経験をしていきたいか?

 

案件の全貌を掴めるようになりたい。それは自分で考えるのと人に聞くこと、調べることで身につくかな。設計するのに必要ないと思っていた情報、例えばお客さんの業界の動向(設計するのに好調だろうが不調だろうが、受注したものを作るだけなんだから関係ないと思ってた)、その地域の特徴、競合の状況、自社のことももっと知りたい。

 

こんなことを考えながら買って、積読してる本。

[実務入門] 営業はリサーチが9割! 売上倍増の“情報収集”完全マニュアル (実務入門)

戦略思考コンプリートブック

1億稼ぐ営業の強化書

現場で闘うリーダーに知っておいてほしいこと


早く読もうね。

 

 

 

ぼーっとして見逃しているけれど、普段から私たちには大小様々なチャンスが回ってきてるんですよね。それをちゃんと掴んでいきたいな。

 

目の前にあるものをチャンスと認識できるかどうかって、自分の欲しいものが明確になっているかにかかっていると思います。

 

例えば、海外のグループ会社との合同プロジェクトやります、という話を耳にしても、いつか海外で働きたいと思っていなければ参加できない。そもそも海外で働きたい!って思っていて、普段から発信していなければ、その話を耳にすることもできないかもしれません。でも同僚に、いつか海外で働きたい、そのためにPE試験(米国のエンジニア公的資格)を取ったんだよねと話していれば、その同僚は自分にプロジェクトの情報を回してくれるかもしれない。

 

 

現状を振り返ってみても、チャンスをもらってきたと思う。

 

3年間、希望の職種につかせてもらえたのも運が良かったし、そこでがんばったと思う。人事を経験出来たのも、学生時代の自分が考えていたことを実行する機会だと思って全力でやった。今月からの新しい仕事も、まだまだ間隔が掴めないものの、とにかくトライアンドエラーだと思って、恥をかきながらやっている。早く成果出したいな。

 

がんばってると言い切っちゃうのも大事なんだろうな。まだまだ全力じゃない気がする…だって寝れてるし休日あるし…とかじゃないよねえ。

 

※女性がキャリアを考えるときに、結婚が、子供がと言ってしまうのはNGと思ってます。人生全体を考えてるならいいのだけれど。今は仕事のことだけ考える、って向き合わないと、永遠に考えることから逃げちゃう気がします。

 

○やること

 

今の勤め先の将来について、考えてみようと思います。先輩の論文読ませてもらう。

 

おしまい。

 

 

 

相手が見たいように見せること-『アマゾンで学んだ!伝え方はストーリーが9割』

 

広告と広報の違いがわかりました。マーケティングの基本的な話が少しと、Amazonの具体的な事例たくさんでした。面白かったしサクッと読めた。

 

○著者

 

小西みさを

AStory合同会社代表

元アマゾンジャパン広報本部長

 

ソフトバンクセガなど複数の企業で10年以上の広報経験を経て2003年にアマゾンの広報責任者に就任。(Amazon.co.jp)の黎明期から急成長した13年間の広報活動の中で、様々なPR手法及びメディアネットワークを活用しアマゾンをブランディング。2千15年にはアマゾンがトヨタGoogleなどを開き、初めて日本のトップブランドになり(日経BPコンサルティングのウェブブランド調査)、広報本部長としてブランド価値向上に貢献。2017年にPR戦略やPR活動のサポート、PRコンサルティングを行う会社、AS tory(エーストーリー)合同会社を設立し代表に就任。ベンチャーから大企業までIT、旅行、食品、消費財、人材サービスなど幅広くサポート中。(本書より引用)

 

○内容

 

1.ストーリーの作り方

 

2.ストーリーを伝える仕事のルール

 

3.会社の強みを伝える

 

4.情報のストーリー化

 

5.自己PR術

 

ばーっと読みましたが、特に興味のあったとこだけメモ。

 

・しつこいくらい同じ話をする。シンプルにわかりやすい言葉で繰り返し繰り返し。

・会議室にはエアカスタマーを置く。顧客目線を常に持つ。

・社内の企画提案はプレスリリース式の文章にしてプレゼンする。パワポは発表資料であり、後で読み返せない。

 

・広報活動とは、企業が社会に対して貢献できる事業活動を行いながら、それを正しく理解してもらうコミニケーション活動、社会に信頼を得る活動である。

 

・社員全員がぶれない発言をする。

理念や価値観を本質的に理解して、言葉は少しずつ違うけれど、みんなブレずに同じことを伝えようとしているという状況を目指す。

 

・PRが成功した後を考える。いいことも悪いことも起きる。

 

・会社が伝えたいこと、会社の強み、伝えられる側が知りたい事を整理する。

 

・ここぞと言うタイミングで、ここぞと言うネタで、でもメールは3〜5行で。

 

・4大質問。なぜ今?何が新しい?何が他と違う?なぜあなたの会社なのか?

良くないのは、社内の準備が整った時だからとか、従来品と比較した性能アップとか、世の中目線がないこと。

・理念、人、商品、設備、立地を洗い出し、最後に「だから、私たちは〇〇ができる」と言う言葉をつければストーリーと強みが一体化していく。個人も同じで、価値観、友人知人家族、趣味特技、持ち物、環境、最後に「だから、私は〇〇ができる」。

 

・自分にとっては当たり前のことを驚いてくれる人たちは誰かと言う視点で自分の強みを探してみるのもあり。

 

○感想

 

ストーリーは強み+「だから、できる。」のパッケージで簡単に作れるんだと学び。それ以外もあるのでしょうが、まずはこの形を一回まねしてみたいな。

 

 

 

○やること

 

朝活で自分タグ付けの話題があったし、この本の話してみよー。

 

おしまい。

 

 

 

 

商社の活躍、日本の高度経済成長−『不毛地帯(五)』

読み切りました!

めちゃ面白かった!

そして長かった、600ページ×5冊!

 

終戦〜1970年代までの長期に渡るストーリーで、登場人物も多く、さらに描写も密度高く書いてあって、読み応えがすごい。

世界を股にかけた主人公を中心とした小説でしたが、数十年の世界情勢や、高度経済成長期の日本の動きを、彼を通して見ることができました。

 

○著者

 

1巻の時に書きましたが再掲。

 

 

山崎豊子

 

1924(大正13)年、大阪市生れ。京都女子大国文科卒。毎日新聞社学芸部に勤務。当時、学芸部副部長であった井上靖のもとで記者としての訓練を受ける。勤務のかたわら小説を書き始め、‘57(昭和32)年『暖簾』を刊行。翌年、『花のれん』により直木賞を受賞。新聞社を退社して作家生活に入る。’63ねんより連載をはじめた『白い巨塔』は鋭い社会性で話題を呼んだ。『不毛地帯』『二つの祖国』『大地の子』の戦争3部作の後、大作『沈まぬ太陽』を発表。‘91(平成3)年、菊池寛賞受賞。(文庫本カバーより引用)

 

読み終わって知ったのですが、これ5年間連載していたらしい。書き続けるのがすごい・・・。

 

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山崎豊子


 

○内容

 

イランでの油田開発を、近畿商事が無事勝ち取ります!その功績もあり、主人公・壹岐正は社内で大きな権力を持ちます。社長の大門もその力を認め、副社長であった里井をタクボ工業社長というポストへ飛ばします。(その後里井はタクボ再建を成し遂げます。)そして壹岐正は副社長につきます。

 

しかし3年かけて掘り進めても一向に石油は出ませんでした。社内では各事業部が稼いだ金が油田開発に消えていくことに不満が溜まっており、社外でも融資している石油公社や銀行からもう手を引くよう圧力をかけられます。担当の兵藤が胃の3分の2を切り取るほどのストレスをかかえるほどの状況下、壹岐は首相・イラン国王まで巻き込んで、最後の挑戦を進めさせます。

 

並行して大門社長の指令により、綿花相場では48億円の損を出しており、壹岐は70を超えた社長の退任をどう進めるかを考えます。

その後無事イランでの最後の挑戦は成功、石油が見つかります。近畿商事、そして大門社長は世の中から称賛され、社内では壹岐の評価が益々高くなります。しかしこの絶頂を逃さず、壹岐は大門に会長ではなく相談役となるよう勧め、そのような進言をする覚悟を示すように自らも辞表を出し、近畿商事を退職します。

 

 

名言がいっぱいでした。

 

元副社長の里井が、近畿商事へ再び戻るよう打診された時の様子。忠誠心がすごい。(のちに気持ちは変わるのだけれど。)

社長が退陣された後までお仕えし、墓石の水のお世話まで致しますという意を響かせていた。

 

朔風会(元ソ連抑留者の会)会長・谷川元大佐の葬儀での、息子の言葉。

父は皆さんのおかげで死ぬまで自分のしたいことをさせて戴き、倖せ者でございました

ソ連抑留者のために、会報を出したり会員の家族の面倒をみたりしていた谷川元大佐の活動を「自分のしたいこと」という謙虚さよ・・・。

 

 

綿花市場暴落の際、繊維部長の虚脱感。

・・・現業の長として、何から自主性を持って動かなかった空疎な思い・・・大門社長との間に任せてもらえるだけの信頼関係を得られず、破れ去ってしまった虚しさであった。

 部長職にありながら、社長に命じられたまま無茶な相場に賭し、大きな損を出しているにも関わらずずっと止められなかった後悔がつらい。

 

 

大門社長の言葉。役員会の承認が得られないだろうという意見に対して、

役員いうたかて、所詮、一期二年の契約制に切り替わった高級サラリーマンや、平の時以上に身の保身を考え、自分の随いて行く先を敏感に嗅ぎ取るものや、・・・

こっわ。

 

※モデル企業・人のまとめ

・近畿商事→伊藤忠商事

・東京商事→日商岩井双日

・五井物産→三井物産

・五菱商事→三菱商事

・丸藤商事→丸紅商事

 

・千代田自動車→いすゞ自動車

・日新自動車→日産自動車

・アイチ自動車→トヨタ自動車

・富国自動車→富士重工業

・五菱商事自動車→三菱商事自動車

・東和自動車→マツダ東洋工業

 

・フォーク→フォード

・ユナイテッド・モーターズ→ゼネラルモーターズ 

作中出てきた車。個性的。

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いすゞ自動車117クーペ

 

 

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いすゞ自動車−ベレット

作中東京商事(日商岩井)とフォーク(フォード)と東和自動車(東洋工業)の三社で合弁会社を作っているのですが、それが現在のジャトコ株式会社。

読んだ後調べていて知ったんですが、ジャトコ出身の役員が、私の勤め先にいる。ここも繋がるのか!と驚き楽しい。

 

・ラッキード社→ロッキード

・グラント社→マクドネル・ダグラス

自衛隊戦闘機を巡る政治献金の問題が起こっています。

もちろんそれをモデルにしている。 

 

第三銀行→第一銀行(みずほ銀行

・日東交易→東日貿易

・タクボ工業→栗田工業

・中京紡績→林紡績

・国際資源開発→石油資源開発

 ・日本石油開発公社→日本石油公団

 

 

・壹岐正→瀬島龍三

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瀬島龍三

・大門社長→越後正一

・里井副社長→貝石社長

 

・佐橋総理→佐八栄作

・田淵幹事長→田中角栄

・黄紅子→デヴィ夫人(まじめっちゃ良い女)

・秋津中将→草場辰巳(極東裁判前に自死?)

・谷川大佐→長谷川宇一

・朔風会→朔北会

 

参考:http://news2ch.com/1068.html

 

 

○感想

 

いやー読み切った。面白かった。

 

 登場人物一人一人を深く濃く描写してあるので気持ちが入っちゃいますね。その分めちゃ人が死ぬのが辛かった。ただ、全巻振り返ると、死をきっかけに主人公・壹岐正は行動を起こしているように思えます。

 

シベリア抑留時代、弱り切った老人を強制労働させようとするソ連側将校に対し怒り、斧で斬りかかったのちに自ら身を投げて死んでいった若い堀少尉。彼の死をきっかけにストライキを起こします。

(参考:「奴隷のままでは死ねない」シベリア抑留後を闘い続けた男たち(栗原 俊雄) | 現代ビジネス | 講談社(2/3)

 

妻の佳子を事故で亡くした後に、アメリカ近畿商事へ出向。そこで独り身のまま大きな成果をあげる。

 

壹岐と酒を酌み交わしたその夜に、事故死とも自殺ともわからない強烈な最期を迎えた友人川俣防衛部長。そのとき扱っていたロッキード社の次期戦闘機を防衛庁への売り込むサポートをしてくれていたことが、彼を死に追いやった。

 

組織の冷徹さもすごいんですよね、副社長を社外に飛ばしておいて、また戻ってきて欲しいと言ったり。副社長のほうも、飛ばされた当時の恨みは忘れていないものの、自分の要求(壹岐正を社外に追放すること)を通そうと交渉したり。

社長命令で相場を張って、大暴落した責任をただ押し付けられノイローゼになったりというか気が狂った部長もいたし、石油の担当者はストレスで胃の2/3切除したり、人をただの駒としてしか見ていないような冷たさが、企業の発展には必要だったんでしょうか。

ついていく上位者をコロコロ変える寝返り役員もいるし(でも子を結婚させてやらねばとかいう言い訳がある)、偉くなると人を信用できなくなりそうですね。面従腹背という言葉があるのをはじめて知りました。

 

 

まじで最後までめっちゃかっこいい参謀・壹岐正のモデルは伊藤忠元会長の瀬島龍三さんでしたが、現実は結構違うみたいです。それはぼちぼち調べてきます。

 

 

○やること

  

この本を読むために、他の本を放置して山積みにしてしまっていました。

それを少しずつ読むのと、8月の試験に向けて勉強を本格的に始めます。

 

おしまい。

 

 

 

 

 

不毛地帯(五) (新潮文庫)

不毛地帯(五) (新潮文庫)

  • 作者:山崎 豊子
  • 発売日: 2009/03/17
  • メディア: 文庫
 

 

 

伊藤忠の石油開発参入−『不毛地帯(四)』

今回は石油も出てきました。どんどん規模が大きくなってきて楽しい。

 

1960年代、イランでの利権を巡る戦い。

現地での第一位は五菱商事(モデルは三菱商事)、第二位は近畿商事(伊藤忠商事)だったが、第一位と言えども五菱商事の立場も厳しかった。

 

○著者

一巻で書いたので割愛。

 

 

○内容

 

伊藤忠商事が進めてきた、いすゞ自動車とフォードの提携話が立ち消えになる。フォードはマツダと組むことになり、その裏には三菱商事の存在があった。 

 

・副社長の里井が狭心症を発症してしまい、その発作は世界を飛び回る商社マンにとって不利なものだった。社内で第2位であった里井のポジションが揺らぎ、それに対して壹岐正(モデルは元伊藤忠会長・瀬島雄三)の力が増していく。

 

・壹岐の中で、陶芸家の秋津千里の存在感が増していく。日本に帰ってきた壹岐はマンションで一人暮らしを始め、秋津千里は度々その部屋を訪ねるが、壹岐の娘と鉢合わせてしまい、元妻を亡くして5年ほど経っているものの、それぞれの心境は複雑だった。

  

※近畿商事(モデルは伊藤忠)がイランの石油開発に参与した話が出てきたが、それはフィクションだそう。(実際は東南アジアへ進出している。)

・イラン南西部サルベスタン鉱区の国際入札が行われる。

日本石油開発公社や、五井(三井商事)・五菱(三菱商事)」と組むこととなったが、近畿商事(伊藤忠商事)の取り分が少ない取り決めとなってしまう。その背景には各社と政治家・大臣とのつながりの深さがある。

石油メジャーではなくインディペンデントと組むことで、近畿商事は自社を有利に進めようと策略を立てる。

 

 

 

○感想

 石油を掘るのってとんでもない金額なんですね(数十億が軽く飛ぶ)。その分当たれば夢がある、小さい会社が逆転するのチャンスと書いてありました。

 

壹岐正の立場がどんどん強くなって面白いのだけれど、その分過去のソ連抑留があらぬ疑いをかけられたり、不穏な動きも出てきます。

第二位の里井副社長が、心臓病のために権力が弱まるのも、所詮企業人は駒なんだなあと感じて切ない。副社長になっても、どれだけ会社のために尽くしてきていても、もうこいつは使えない・・・って部下からも社長からも思われてしまうのね。里井さんにはお世話になったけれど、これからは壹岐さんの時代だ、なんて考えて、乗り換える部下の狡猾さよ・・・。社内政治もこの小説の見どころの一つです。

 

○やること

 

最終巻走り切ります!

 

 

おしまい。

 

 

 

 

 

不毛地帯(四) (新潮文庫)

不毛地帯(四) (新潮文庫)

  • 作者:山崎 豊子
  • 発売日: 2009/03/17
  • メディア: 文庫
 

 

 

いすゞ自動車へ外資参入?-『不毛地帯(三)』

衝撃の多い三巻でした。

特に壹岐さんの妻の死、そして元上官の娘・秋津千里との恋。

 

【この巻で出てくる会社】

伊藤忠商事

双日

いすゞ自動車

・フォード

トヨタ自動車

日産自動車

・第一銀行(2000年に他行と合併してみずほになる)

 

企業ではありませんが、

通産省

 

実際の出来事がベースになってると思うと、ワクワク感がすごい。

 

 

○著者

1巻で書いたので割愛。

 

 

○内容

 

いすゞ自動車とフォードの提携の準備が進む。

日本の自動車産業が発展し、アメリカの市場を買い始めた頃、外資が日本へ入ってこようとしていました。その一つが、フォードによる日本進出の計画。しかしそれを食い止めたい通産省と、構わず進める自動車メーカーや商社の対立と情報戦がまた面白い。

 

フォードは日本企業と提携したい、出資比率50%を取りたがるものの、そんなことはどの会社も許せるはずがなく、さらに通産省としても許可が下りないはず、であれば新たに合弁会社を作ればよいのではないかと話が広がります。

3巻では結論が出ず、次巻に続きます。

 

ここでまた登場する谷川元大佐。毎回言葉が重い。

商社で汚く染まってしまいながらも、抑留者の会へ定期的に顔を出す壹岐(モデル:伊藤忠元社長・瀬島龍三)は、いつも谷川元大佐の言葉に胸を痛めているようにみえます。

今のように物資は豊かでも、精神的な不毛の中に生きる方が、生き辛い・・・

 

 

さらに事件は起こります。

壹岐をライバル視する副社長・里井のアメリカ出張中、心臓発作が起こしてしまい、現地社長に出世していた壹岐に助けられてしまいます。里井は壹岐に貸しを作り、弱みを握られたと屈辱を覚えます。さらに大門社長も、そのような状態の里井をどう扱うか、次期社長のポストを含め考えを見直し始めます。

 

 

壹岐のプライベートも事件が多い3巻でした。特に女性絡み。

 

 

 

○感想

 

衝撃的なことが多かったな。

 

日本の自動車市場への、外資の進出。こういうとこに商社はバチバチ絡んでるのね、知らなかった。

主人公の壹岐がその計画をどう進めていくのか、日米メーカー両者に加えて銀行や通産省、そして社内の敵ともバランスをとりながら進めていく流れが、なんだか今やっている仕事に重なりました。

「絵を描く」っていうやつ、ストーリーの組み方や見せ方が、商社だとより大切なんだろうなあと思ったり。

 

健気で奥ゆかしい、軍人の妻の鑑といえるような壹岐夫人の死も衝撃でした。

十一年も夫がシベリアに抑留され、生きているかもわからなかったり、帰ってきてからも商社で忙しくしていて、その仕事の多くは語ってくれず不安になったりと苦しいことが多かったはず。それでも子供たちを育て上げ、献身的に家族に尽くし、晴れやかな舞台でも慎み深い彼女は素敵だったし、だからこそ亡くなってしまった時泣いてしまった。

 

そして彼女の死から数年後、元上官の娘との恋。壹岐さんの紳士的なアプローチが素敵。自制心が強い元軍人の商社マンに、情熱を込めて抱きしめられたらもうイチコロやな…と思ってしまった。

 

 

 

○やること

 

6/23までにあと2冊読まなきゃいけない。無理よ…。

 

読んだ期間メモ

(一)6/5~6/8 めちゃ頑張って読んだ…

(二)6/9〜6/14 案の定たるんだ

(三)6/15〜6/20 早く読まんと間に合わんと焦る

 

 

 

おしまい。

 

 

 

 

 

不毛地帯(三) (新潮文庫)

不毛地帯(三) (新潮文庫)

  • 作者:山崎 豊子
  • 発売日: 2009/03/17
  • メディア: 文庫